2019年2月26日火曜日

夕凪亭閑話 2008年3月

    
2008年3月3日。月曜日。晴れ。一時小雨。 旧暦1.26 みずのえ とら 九紫 友引
 季節は巡り,どんどんと春になっていきます。黄砂も多かった。
 ミチオ・カク著、稲垣省五訳「超空間」(翔泳社)  これは多次元世界・多次元物理学について歴史的な流れを中心にして解説し、超ひも理論の誕生・発展史へ繋げていくという、まことに壮大な物語です。その間に、宇宙論、量子論、相対論などが要領よく、そしてまことに楽しく、興味深く解説されています。そして最後が、宇宙の消滅と知的生物のかかわりという超未来の話になってきます。ということで、単なる科学解説書ではない、まことに刺激的な現代科学に関する読み物です。
 
2008年3月4日。火曜日。晴れ。夕方小雨。 旧暦1.27 みずのと う 一白 先負
 朝六時には明るくなっています。どんどんと日が長くなっていくようです。
  「蕭相國世家第二十三 史記巻五十三」(新釈漢文大系)
 劉邦を支えた功労者蕭相國何の事跡である。他の世家と異なり蕭何一人の話に終始し、子孫のことは最後に一行で述べられるだけである。それ故、列伝の体をなし、大変読みやすい。蕭何の行動にについて、高祖の反感を買わないように、助言する知恵者がいるが、その姿は見えない。また、逆に高祖が蕭何を疑ったときとりなす者もいる。その展開のうまさはまさに司馬遷の得意とするところである。
 
2008年3月6日。木曜日。晴れ。 旧暦1.29 きのと み 三碧 大安
 昨日が啓蟄で,日射しは勿論,気温もあがり,確かに春めいてまいりました。さすがに三月ですね。日本ではやはり,二月が冬で三月が春ですね。
 ミチオ・カク、ジェニファー・トンプソン著、久志本克己訳「アインシュタインを超える」(講談社ブルーバックス)は、ミチオ・カク氏の「超空間」の姉妹編である。したがって内容は、ほぼ同じで、相対論、量子論という20世紀物理学の流れから超ひも理論へと読者を誘っていくのであるが、タイトル通り、今度はアインシュタインが前面に出て、特殊相対性理論、一般相対性理論、そして実を結ぶことがなかった統一場理論の歴史と、量子論のかかわりが述べられる。特に、20世紀物理学の中心にならなかった統一場の理論の話はおもしろい。そして袋小路に入った素粒子物理学との関連でひも理論の萌芽の話にいく。ここでは日本人の活躍にも十分照点が与えられていて、親しみがもてる。そして最後は超ひも理論と、宇宙論の話で終わる。途中出てくるたとえ話にしても実に見事で、現代科学の見事な解説書であると言える。
 
 
2008年3月7日。金曜日。晴れ。 旧暦1.30 ひのえ うま 四緑 赤口
 春らしくなった。春宵一刻値千金の頃にはまだ早いが,午後六時半になってもまだ外は明るく,カーテンも閉めずに暮れゆく春の日を見送るのも風情があってよい。
 「曹相國世家第二十四 史記巻五十四」(新釈漢文大系)
 前巻ででてきた蕭相國何の後任宰相、平陽候曹参の話である。まず夥しい戦功が記される。連戦連勝不敗の将である。その理由は韓信とともにあったからと司馬遷は言う。それだけではないと思うが・・・。そして蕭相國何のあとは、國何が法律は制定してあるのだから、自分はそれをひたすら守るということで、下手な名声を求めないところが大人の大人たるところであろうか。部下も、あまり厳格な者は用いないというのは、法文を見て人を見ない官吏を退けたということで、治にあっても乱にあっても、正しく身を処せた人間だったのではなかろう。
 
 
2008年3月8日。土曜日。晴れ。 旧暦2.1 ひのと ひつじ 五黄 友引
 今度は,完全な春だ。暖かくなった。早春の野も山も素晴らしいだろう。しかし,どこにも行かず,一日中家にいた。
 竹内薫「超ひも理論とは何か」(講談社ブルーバックス)は、超ひも理論についての、初心者向け解説書である。やや難しいのは、この手の本にしては深く専門的領域にまで踏み込んだ本であるからである。しかし、数式なしでその概念を解説しようという著者の熱意がひしひしと伝わってくる。著者が努力されているのだから、後は読書が努力せねばならないということである。参考文献は、家庭のインターネットから読むことのできるarXivのものも多く掲載されているのも、便利である。
 
 
2008年3月9日。日曜日。晴れ後雨。 旧暦2.2 つちのえ さる 六白 先負
 野山の山桜が一斉に咲いて,いよいよ春到来である。夕刻より雨になったが,春らしい雨である。
 「留侯世家第二十五 史記巻五十五」(新釈漢文大系)
 留侯張良あるいは,張子房は高祖に奇策を献じ,悉く成功するもその功を誇らず高祖亡き後は隠棲したという見事な人生を送った人士の話で,大変面白い。老人に出会い,太公望の兵書を授けられるというエピソードから始まるが,それだけのエピソードを生むほどの人材であったということである。
 
 
2008年3月10日。月曜日。晴れ。旧暦2.3 つちのと とり 七赤 仏滅
 雨も上がり,晴れてくると春の明るさになりました。そして気温も上昇し,昨日に引き続き,春の訪れを確実に感じます。
 吉川圭二「超ひも理論と宇宙」(裳華房ポピュラーサイエンス)は,コンパクトながらよくまとまった本である。しかし内容は高度である。次元やスケールの話があり,他の入門書とは一線を画した本であるとも言える。
 
2008年3月12日。水曜日。晴れ。旧暦2.5 かのと い 九紫 赤口 
 昨日に続いて気温も上がり,春爛漫。メダカも金魚も活発に泳ぎだした。梅は開き,サクランボの蕾が日に日に大きくなっていく。
 「陳丞相世家第二十六 4史記巻五十六」(新釈漢文大系)
  陳丞相平という奇策で知られる名宰相の伝である。高祖を助け,高祖亡き後は,呂氏一族討伐の最大の功労者である。しかし,司馬遷の描く,陳平の陰謀は暗い。読書の楽しみを得られない。しかし,知謀に長けた人物であったことはよくわかる。
 
 
2008年3月13日。木曜日。晴れ,夕方から雨。旧暦2.6 みずのえ ね 一白 先勝
 今日も気温が高く春めいた日であったが,午後から曇り,夕方から雨になった。これでまた一段と暖かくなるだろう。
 広瀬立成「超ひも理論と『影の世界』」(講談社ブルーバックス)。これも超ひも理論の入門書ですが,素粒子論のところ,特にファイマンダイアグラムの説明が丁寧でよくわかります。それと宇宙論のところにも力入っていて楽しく読めました.。
 
 
2008年3月14日。金曜日。雨後雲。旧暦2.7 みずのと うし 二黒 友引
 朝起きると,昨夜来の雨もやんでいたので,晴れると思っていたのに,昼間に強く降ったりして,ひさしぶりにまとまった量の,春の雨だったようです。
 「絳侯周勃世家第二十七 史記巻五十七」(新釈漢文大系)
 絳侯周勃とその子周亜夫の伝。八面六臂の活躍振りが素晴らしい。結果のみ描いて心理描写も策略もない。前二巻と対称的であるが前巻の陰気な策略を読んだあとだけに,一層この巻が引き立つ。この巻だけ読むと,軍功の羅列のように思われるかもしれない。
 
2008年3月15日。土曜日。晴れ。旧暦2.8 きのえ とら 三碧 先負 さんりんぼう
 風は冷たいが,まことに春らしいよいお天気。戸外で過ごすこと多し。
 「絳侯周勃世家第二十七 史記巻五十七」(新釈漢文大系)
 つづき。後半,絳侯周勃は謀反を疑われるが,文の才無く,弁明をすることができない。平時には向かない男だったのだ。周亜夫の計略武功も素晴らしい。しかし,暗愚な主君である景帝の世になると,容れられない。
 
2008年3月16日。日曜日。晴れ。旧暦2.9 きのと う 四緑 仏滅
 春です。いつもの服装では暑い。でも,夕方はやはり肌寒い。 
 今日はDVDで「マッドマックス」と「廃市」を見ました。「マッドマックス」は,監督ジョージ・ミラー。主演メル・ギブソン。「廃市」は,福永武彦さんの原作で大林宣彦監督作品。どちらも,ちょっとだけ見てみようというつもりだったのですが,結局最後まで見てしまいました。
 
2008年3月20日。木曜日。晴れ。旧暦2.13 つちのと ひつじ 八白 友引 春分の日
 春の嵐が吹いているが暖かい。夜,ふと東の空を見上げると満月近くの月が煌々と昇って来ている。
 「梁孝王世家第二十八 史記巻五十八」(新釈漢文大系)
 梁の孝王武は,呉楚七国の乱によく抵抗し漢王室に対して手柄を立てたが,兄孝景帝の皇太子をめぐって失政したという話。皇位争いのもととなるのだが,梁の孝王武のミスというべきであろう。
 
 
2008年3月21日。金曜日。晴れ。旧暦2.14 かのえ さる 九紫 先負
 さくらんぼの花が満開です。昨年よりたくさん咲いているので,きっと昨年以上にたくさん実ができることでしょう。野鳥に食べられなければ,の話ですが。 
 昨夜,大林宣彦監督作品「ふたり」を見た。新・尾道3部作・第一作ということであるが大変すばらしい作品である。尾道の美しい場所が,たくさん撮られていて楽しい。いや,美しく撮られていて,と書くべきであろう。いつも見る(見てないところもある),普通の光景も多いであろう。それを美しく撮るということで,美しい場所になるのであろう。位置関係がわかるので,あっという間にあちらへ移ったり,こちらへ来たりと,多少の違和感はあったが,物語そのものはよかった。脇を固める女優陣もよい。
 
2008年3月22日。土曜日。晴れ。旧暦2.15 かのと とり 一白 仏滅
 今日は満月で,大潮です。そして正午頃が満潮で,はるか奥まで潮が来ていました。気温は高くまことに気持ちよい春です。
 「五宗世家第二十九 史記巻五十九」(新釈漢文大系)
 「孝景帝の子は,凡そ十三人,王と為り,而して母は五人なり,同母の者を宗親(そうしん)と為す。」ということである。だから五宗世家と言うのだそうです。
 
2008年3月23日。日曜日。雨。旧暦2.16 みずのえ いぬ 二黒 大安
 春になったので,少しだけでかけてきました。万葉集11巻の2423番にある「道の後深津島山しましくも君が目見ねば苦しかりけり(,みちのしり,ふかつしまやま,しましくも,きみがめみねば,くるしかりけり)という柿本人麻呂歌集にある歌の歌碑を見に,蔵王山へ行ってきました。ちょうど福山衝上断層奈良津露頭の上あたりでしょうか。
 ついでに国指定史跡宮の前廃寺跡というところも見てきました。こちらは福山市民病院の下です。 
 「三王世家第三十 史記巻六十」(新釈漢文大系)
 いよいよ世家最終巻だが、残念ながら、司馬遷自筆の本文は散逸して現存しない。少孫の補筆である。ということで,やっと30世家が終わりました。
 
2008年3月24日。月曜日。曇り時々晴。旧暦2.17 みずのと い 三碧 赤口
 雨が上がり,今日は暑くなるかなと思ったのですが,曇りがちで,ゆっくりと季節が移動しているという感じでした。暖かくなったの,池の濾過器を回すことにしました。冬の間,ほっておいたので,底にゴミがかなりたまっています。これを少しずつ目の細かい網で掬って捨てていきます。 
 「三皇本記 小司馬氏撰」(新釈漢文大系)
 本日から史記・本記に入ります。テキストは例によって,吉田賢抗著「史記一(本記)」(明治書院 新釈漢文大系38)です。
 三皇本記は,司馬遷の作品ではないが,巻頭にあります。
2008年3月28日。金曜日。晴。旧暦2.21 ひのと う 七赤 仏滅
 季節はどんどん進んで,近くの桜並木も,隣の公園の桜も咲き始めたのだが,やや寒い。そして夜はさらに寒い。花冷えである。
 「五帝本紀第一」(新釈漢文大系)
 司馬遷史記本紀のはじまりである。その巻頭は「黄帝 黄帝者,少典之子」(黄帝は少典の子なり)から始まる。後半,堯,舜の活躍から読み応えが出る。しかし,記録も十分でない時代の,雲を掴むような話である。
 
2008年3月30日。日曜日。雨。旧暦2.23 つちのと み 九紫 赤口
 春の雨は冷たい。せっかくの早春の日曜日が雨というのは,いかにも残念だが仕方がない。アウトドアの仕事もできず,一日中家にいた。寒いので炬燵から出られない。
 東野圭吾「聖女の救済」(オール讀物2008.4迄連載)が完結したのでまとめて読んだ。毒薬を用いた殺人事件である。毒薬の場合は推理小説としては難しいと思うが、矛盾なく(実際に測定してみると、小説のようにはいかないと思うが)、よくできた推理小説になっていて、作者の力量に感心した。前に読んだ、「容疑者Xへの献身」よりも楽しかった。