「特修化学」(仮称)について
1. はじめに
昭和57年度より実施されている新しい教育課程では、従来の「化学1」「化学II」という科目はなくなり「 理科I」と「化学」とい う新しい形態となった。それに伴い 「化学II」 の一部が削除されたので、全体的には化学は内容がやさしくなったといえる。
「化学II」は理科系志望の生徒が主として 選択復習した科目であるにもかかわらず、ど ちらかといえば現場から歓迎されずに早々と 撤退したという印象はぬぐいがたい。しかし 筆者は「化学II」において高校教育にとり入 れられた成果をここで捨て去るには惜しいよ うに思う。
幸い竹林保次氏によって「特修化学」(仮称・2単位)の構想が異示されているので(1)、それを参考にして筆者なりの考えを展開してみた。なおこの科目の名称として適当なものがないので、ここでは竹林氏にならって「特修化学」とさせて頂く。
2.「特修化学」の位置づけ
竹林氏は「特修化学」を「理数系方面に高い理解力をもつ生徒への対策」とされている。 さらに筆者は、その位置づけとして以下の ように考えている。
(1) 「化学II」の削除された部分の保存。
(2) 高校化学の内容としての最上限。
(3) 「理科II」(化学分野)に対応する理論編。
(1)については、既に述べたように、「化学 II」の評判はよくなかったものの、モデル実験をはじめとして、多くの教育方法が開発されており、その成果をこういう形で残すことができる。しかし、「化学II」の攻罪につい てはもう少し長い目で見てから結論を出べきものではないかと思っている。
(2)については、指導要領とは別に、この握度までは高校でやるべきだという理想を誰しもが持っている。そういう意味でこの「特修化学」は、その最上限に位置する。
(3)については、(2)とも関係するが、高校化学教育という視点で全体を眺めたとき 「理科II」のような立場の研究とともに、「特修 化学」のような方面の研究も必要だということで、ちょうど「理科II」と対称的な関係に「特修化学」を位置づけることができる。
3.内容構成
内容の検討に入る前に、まず新教育課程において削除された項目を指導要領から抜き出すと以下のようになる。大項目、中項目につ いては、新旧の片方にまとめず両者から適当 に選んで、形式的に整理してみた。
(1)~(2)が大項目、ア~ウが中項目である。
(1) 物質の構造
ア.原子の構造
原子のエネルギー準位
イ.化学結合
金属結合
ウ.分子の構造と性質
簡単な分子の構造、極性 水素結合、分子間力
エ.遷移元素
遷移元素の特徴、錯イオン
(2) 化学反応
ア.化学平衡
平衡定数、乱雑さ
イ.反応の速さ
触媒
炭素化合物(有機化合物)については、大きな 変更はないので、敢えて挙げなかったが、反応性に関する理論的取り扱いが削除された。
次に上記のことをもとに、内容を章立て風 に記す。
1. 原子の構造と化学結合
(電子のエネルギー準位、金属結合、極性水素結合、分子間力)
2. 化学平衡と化学反応の速さ
(平衡定数、乱雑さ、活性化エネルギー)
3.遷移元素とその化学物
(錆イオン、配位結合)
4.炭素化合物の構造と反応
(反応のおこる位置)
5.定性分析・定量分析
(陽イオン・陰イオンの定性分析、若干の定量分析)
全体を2単位として、ストーリー性をもたせるのは大変なことである。「化学」に含まれることはできるだけ避けることにしてもちょうど 「化学I」と「化学」で重複する部 分があったように、削除された部分だけで説明する訳にいかない。特に2.化学平衡と化 学反応の速さでは「化学」と重複せざるを得ない。
4. 形態
以上のことを踏まえて義用資料を作る必要がある。
(1) テキスト・・・教科書風記述
(2) 演習問題
(3) 実験書
(4) 資料・データ集
演習問題については、従来の入試問題に準じた形式に加えて、作業的なものも加えてお くとよいであろう。(グラフ化、模型の製作)
5. おわりに
本稿で引用させて頂いた竹林保次氏の提案は第3者がまとめた講演紹介の文によった。 講演錄や竹林氏自身によって書かれた論文を見ることができなかったので、筆者の誤解があるかもしれない。お許し願いたい。
本稿で展開した事例を具体的な教材に作製するのは次の段階の仕事である。
科目「化学」を中心に展開すべき課題は数多いが、とりあえずこの方面のシラバスを考えてみた次第である。ご批判を頂ければ幸いに思います。
注
1) 化学教育,30 (2),192 (1982) (昭和59年1月8日)
研究紀要「邑久高紀」第10号 p.39-41 岡山県立邑久高等学校 昭和59年3月