1 酸と塩基
「水素イオン濃度の大きさは水素イオンに関する規定度,すなわち10の負のベキの形で示される数字で表されるのである。詳しくは後章を参照されたいが,ここでは指数の数値をpH+と記し,水素イオン指数と呼ぶことを述べるにとどめよう。」 S.P.L.S〓rensen 「酵素の研究㈼酵素反応における水素イオン濃度の測定と重要性について」(1909) (田中元治訳)
日本化学会編「化学の原典第㈼期 2電解質の溶液化学」p.65 より
1−1 酸と塩基
1 酸……塩化水素のように水に溶かすと電離して水素イオンを生じるような水 素をもつ化合物を酸という。
酸性……酸の水溶液は,すっぱい味をもち,青色リトマス紙を赤くしたり, マグネシウムや鉄のような金属と反応して水素を発生する。このよう な性質を酸性という。
2 塩基……水酸化ナトリウムNaOHのようにOH-を含む化合物を塩基という。
塩基性……塩基の示す性質を塩基性またはアルカリ性という。
うすい水溶液は苦い。赤色リトマス紙を青変する。
フェノールフタレイン溶液を加えると赤紫色になる。
酸の性質を打ち消す。
3 アレーニウスの定義
酸………水に溶けてH+を放出する物質。
塩基……水に溶けてOH-を放出する物質。
アルカリ……水によく溶ける無機化合物の塩基。
水に溶けにくいものや,有機化合物で塩基であるものはアルカリとはいわ ない。アンモニアもアルカリとはいわない。
4 ブレンステッド−ローリーの定義
酸………H+を他に与える物質。
5 ルイスの定義
酸………非共有電子対を受け取る物質。
塩基……非共有電子対を他に与える物質。
6 酸・塩基の性質
●●● 実験1 酸・塩基の水溶液の性質 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 酸・塩基の水溶液の性質を確かめる。
準備 試験管4,試験管立て,ピンセット,ガラス棒,亜鉛,マグネシウム
1mol/l塩酸,1mol/l硫酸,1mol/l水酸化ナトリウム水溶液
1mol/lアンモニア水,リトマス試験紙,フェノールフタレイン溶液
方法 少量の試薬を試験管にとり,下の表のような性質を比較する。
┌───────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ │希塩酸 │希硫酸 │水酸化ナトリウム溶液│アンモニア水 │
├───────┼─────┼─────┼─────┼────┤
│リトマス試験紙│ │ │ │ │
├───────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│フェノールフタレイン溶液│ │ │ │ │
├───────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ (味) │ │ │ │ │
├───────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│手につけた感じ│ │ │ │ │
├───────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│金属との反応 │ │ │ │ │
├───────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│その他の性質 │ │ │ │ │
└───────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
考察
1. 酸・塩基の性質についてまとめよ。
7 酸・塩基の電離と価数
(物質名) (化学式) (電離式)
㈰ 1価の酸
HCl
HBr
HNO3
CH3COOH
㈪ 2価の酸
H2SO4
H2SO3
H2S
(COOH)2
㈫ 3価の酸
H3PO4
H3BO3
このように,一つの分子から電離して生じるH+イオンの数が異なるので
この数にしたがって,1価の酸,2価の酸,3価の酸と区別する。
問い1 硫酸,リン酸の各段階の電離式を書いたのち,それらを1つの式にまとめよ。
㈬ 1価の塩基
水酸化ナトリウム NaOH
水酸化カリウム
アンモニア NH3 + H2O →
水酸化リチウム
㈭ 2価の塩基
水酸化カルシウム Ca(OH)2 →
水酸化バリウム
水酸化マグネシウム
水酸化銅(㈼)
水酸化ストロンチウム
水酸化亜鉛
㈮ 3価の塩基
水酸化鉄(㈽)
水酸化アルミニウム
1−2 水素イオン濃度
1 酸・塩基の電離
酢酸の電離平衡
電離度……溶かした電解質のうち,電離した電解質の割合。
電離している電解質の物質量(mol)
電離度α=───────────────
溶かした電解質の物質量(mol)
例)18℃で0.1mol/lの酢酸中には酢酸イオンが0.0013mol/lある。電離度は いくらか。
2 酸・塩基の強弱
強酸・強塩基……
弱酸・弱塩基……
問い2 0.10mol/lのアンモニア水が500〓ある。18℃で,この水溶液中に存在 するOH-の数を求めよ。ただし電離度は0.013とする。
3 水の電離平衡
水の電離平衡
平衡定数K=───────────
水のイオン積KW =[H+][OH-]=K[H2O]
温度が一定であれば一定。
KW=1.0×10-14(mol/l)2 25℃
∴ [H+]=[OH-]=1.0×10-7(mol/l)
問い3 25℃で,純粋な水1.0l中に含まれる[H+]は1.0×10-7(mol/l)である。この温度での水の電離度を求めよ。水の密度を1.0g/cm3とする。
4 水素イオン指数pH
水のイオン積は一定であり,これは水溶液中でも一定。
25℃
酸性 [H+]>1.0×10-7mol/l>[OH-]
中性 [H+]=1.0×10-7mol/l=[OH-]
アルカリ性 [H+]<1.0×10-7mol/l<[OH-]
1
pH=-log[H+]=log─ pOH=-log[OH-] pH + pOH =14
[H+]
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
pH├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
[H+] 10-1 10-3 10-5 10-7 10-9 10-11 10-13 (mol/l)
[OH-] 10-13 10-11 10-9 10-7 10-5 10-3 10-1 (mol/l)
●●● 実験2 pHの測定 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 いろいろな溶液のpHを測定する。
準備 食酢,レモン,トマト,だ液,セッケン水,中性洗剤液,pH試験紙
ピンセット,試験管立て,ビーカー(各液が入っている)
方法
1. ビーカーに検液を少量とる。
2. pH試験紙の一部をピンセットで検液に1〜2秒浸して取り出し,中央部の色を 変色表とただちに比べる。
比色の判定で2と3の中間の色のときは,2に近ければ2(+),3に近ければ3(-)
とする。
結果
┌──┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬──┐
│試料│食 酢│レモン│トマト│だ 液│セッケン水│洗剤 │ │ │
├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼──┤
│ pH│ │ │ │ │ │ │ │ │
└──┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴──┘
●●● 実験3 酸・塩基の濃度とpH ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 酸・塩基の濃度とpHの関係について調べる。
準備 1.0mol/l塩酸,1.0mol/l酢酸,1.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液
1.0mol/lアンモニア水,万能pH試験紙,pH試験紙セット,標準変色表,
試験管12,ピンセット,メートルグラス,試験管立て,蒸留水
方法
1. 試験管aにメートルグラスで1.0mol/l塩酸を2〓とる。
2. メートルグラスに1.0mol/l塩酸を2〓とり,蒸留水を加えて20〓とする。
これを試験管bに移す。
3. 試験管bの塩酸をメートルグラスに2〓とり,蒸留水を加えて20〓とする。 これを試験管cに移す。
4. 各溶液のpHを測定する。測定法は,まず万能pH試験紙で整数以上の値を読み 標準変色表(クリアケース入り)で,次に必要な試験紙の見当をつけ,その試 験紙を教卓上から1枚取り,今度はこの試験紙に検液をつけて,結果を標準変 色表から読み取る。(少数点以下第1位まで)。
5. 同様な操作を酢酸,水酸化ナトリウム水溶液,アンモニア水についても行い結果と考察
1. 結果を表に記入するとともに各理論値を計算し,実験値と比較する。
┌──────┬───────┬───────┬────────┐
塩酸│試験管(濃度)│a(1.0mol/l)│b(0.10mol/l)│c(0.010mol/l)│
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH(実験値) │ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│[H+](理論値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH(理論値) │ │ │ │
└──────┴───────┴───────┴───────┘
酢酸┌──────┬───────┬───────┬────────┐
│試験管(濃度)│a(1.0mol/l)│b(0.10mol/l)│c(0.010mol/l)│
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (実験値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│[H+](理論値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (理論値)│ │ │ │
└──────┴───────┴───────┴────────┘
水酸化ナトリウム水溶液
┌──────┬───────┬───────┬────────┐
│試験管(濃度)│a(1.0mol/l)│b(0.10mol/l)│c(0.010mol/l)│
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (実験値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│[H+](理論値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (理論値)│ │ │ │
└──────┴───────┴───────┴────────┘
アンモニア水
┌──────┬───────┬───────┬────────┐
│試験管(濃度)│a(1.0mol/l)│b(0.10mol/l)│c(0.010mol/l)│
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (実験値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│[H+](理論値)│ │ │ │
├──────┼───────┼───────┼────────┤
│pH (理論値)│ │ │ │
└──────┴───────┴───────┴────────┘
問い4 0.10mol/lの酢酸水溶液のpHを求めよ。ただし,酢酸の電離度は0.013
であり,log1.3=0.11とする。
問い5 0.10mol/lの塩酸のpHを求めよ。また,この塩酸10〓に水を加えて,
100〓とした塩酸のpHを求めよ。ただし,塩化水素はすべて電離しているものと する。
問い6 水酸化ナトリウム2.0gを水に溶かして,500〓の水溶液をつくった。こ の水溶液の[OH-]とpHを求めよ。
5 指示薬とpH
酸・塩基の指示薬
┌─────────┬───────────────────────┐
│ │ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 │
├─────────┼─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤
│チモールブルー │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│メチルオレンジ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│メチルレッド │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│リトマス │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ブロムチモルブルー│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│クレゾールレッド │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
├─────────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│フェノールフタレイン │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
└─────────┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘
問い7 0.1mol/lの塩酸1〓を水でうすめて1lにした。その少量をとってメチルオレンジを数滴滴下すると何色を示すか。
問い8 BTBを含む溶液は,酸性,中性,塩基性でそれぞれ何色を示すか。
古いノート残骸
1−5 酸・塩基と中和反応
問1 二酸化硫黄は,水と反応して亜硫酸H2SO3になり,三酸化硫黄SO3は,水と反応して硫酸になる。これらの変化を化学反応式で示せ。
問2 酸化ナトリウムNa2O,酸化カルシウムCaOなどは水と反応してそれぞれ水 酸化ナトリウム,水酸化カルシウムなどを生じる。これらの変化を化学反応式で示せ。
実験 酸化カルシウムの反応
3 中和反応……酸に塩基を加えると,H+とOH-とが反応して,中性の 水に変わる。このような変化を中和反応という。
H+ + OH- → H2O
中和反応において水とともに生成する物質を塩という。
例題1 以下の化学反応式を書け。
1 塩酸と水酸化ナトリウムが反応して食塩と水になる。
( )+( )→( )+H2O
2 硫酸と水酸化ナトリウムが反応する。
( )+( )→( )+( )
3 塩酸と水酸化カルシウムが反応する。
( )+( )→( )+( )4 塩酸とアンモニアの反応が反応する。
( )+( )→( )
問3 次の各中和反応を化学反応式で示せ。
1 硫酸に水酸化カルシウム水溶液を加えた。
2 酢酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
3 硫酸にアンモニア水を加えた。
4 中和反応における量的関係。
例 NaOH + HCl → NaCl + H2O
1mol 1mol
40g 36.5g
この反応では酸(塩酸)と塩基(水酸化ナトリウム)が1モルずつ反応する。
例題2
1 0.1mol/lの塩酸50〓と反応する0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液は何〓か。
2 0.1mol/lの塩酸50〓と反応する0.2mol/l水酸化ナトリウム溶液は何〓か。
3 0.2mol/lの塩酸100〓と反応する0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液は何〓か。
4 0.2mol/lの塩酸100〓と反応した水酸化ナトリウム溶液は50〓だった。この水酸化ナトリウム溶液の濃度は何mol/lか。
問い7 0.1mol/lの塩酸1〓を水でうすめて1lにした。その少量をとってメチ
ルオレンジを数滴滴下すると何色を示すか。
問い8 BTBを含む溶液は,酸性,中性,塩基性でそれぞれ何色を示すか。
1−3 中和反応
中和反応……酸に塩基を加えると,H+とOH-とが反応して,中性の水に変わる。 このような変化を中和反応という。
H+ + OH- → H2O
中和反応において水とともに生成する物質を塩という。
●●● 実験4 中和反応と水の生成 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 中和反応において塩が生成したことは中学校で習っているので,ここでは 水の生成について確認する。
準備 試験管2,試験管立て,薬さじ1,蒸留水,ゴム栓1,無水硫酸銅,酢酸
水酸化ナトリウム
方法
1. 試験管に無水硫酸銅を薬さじ(小)1杯とり,色を観察する。
2. 1.に蒸留水を数滴落とし色の変化を観察する。
無水硫酸銅の色の変化から水の存在の有無を確認できることがわかった。
3. 乾いた試験管に氷酢酸を少量(高さにして1cm)とり,これに無水硫酸銅を薬 さじ(小)1杯を加えて少し振る。(色)
4. 3.の試験管にさらに,水酸化ナトリウムを2粒加えて,ゴム栓をしてよく振 り,変化を観察する。
考察
1. 方法4.から何がわかるか。
問い9 以下の化学反応式を書け。
1 塩酸と水酸化ナトリウムが反応して塩化ナトリウムと水になる。
2 硫酸と水酸化ナトリウムが反応する。
3 塩酸と水酸化カルシウムが反応する。
4 塩酸とアンモニアが反応する。
問い10 次の各中和反応を化学反応式で示せ。
1 硫酸に水酸化カルシウム水溶液を加えた。
2 酢酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
3 硫酸にアンモニア水を加えた。
問い11 二酸化硫黄は水と反応して亜硫酸H2SO3になり,三酸化硫黄SO3は水と反応して硫酸になる。これらの変化を化学反応式で示せ。
1−4 塩の分類
1 塩
酸と塩基が中和してできた水以外の物質。酸の水素原子を金属またはNH4+で置き換えた形。 金属+酸基,NH4+ +酸基
酸 + 塩基 → 塩 + 水
┌──────┬───────────┐
┌┴─┐ ┌──┴┐ ┌──┐ ┌─┴─┐
│HA│+│BOH│→ │BA│+ │H2O│
└─┬┘ └┬──┘ └┬─┘ └───┘
└───┴──────┘
HCl + NaOH → NaCl + H2O
┌───────┬───────┬──────┐
強酸 │塩酸 │硫酸 │硝酸 │
┌─┬────────┼───────┼───────┼──────┤
│ │水酸化ナトリウム│ │ │ │
│ │ │ │ │ │
│強│水酸化カリウム │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
│塩│水酸化カルシウム│ │ │ │
│ │ │ │ │ │
│基│水酸化バリウム │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
├─┼────────┼───────┼───────┼──────┤
│ │水酸化マグネシウム │ │ │ │
│弱│ │ │ │ │
│ │アンモニア │ │ │ │
│塩│ │ │ │ │
│ │水酸化銅(㈼) │ │ │ │
│基│ │ │ │ │
│ │水酸化鉄(㈽) │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
└─┴────────┴───────┴───────┴──────┘
┌───────┬───────┬──────┐
弱酸 │酢酸 │炭酸 │硫化水素 │
┌─┬────────┼───────┼───────┼──────┤
│ │水酸化ナトリウム│ │ │ │
│強│ │ │ │ │
│ │水酸化カリウム │ │ │ │
│塩│ │ │ │ │
│ │水酸化カルシウム│ │ │ │
│基│ │ │ │ │
│ │水酸化バリウム │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
├─┼────────┼───────┼───────┼──────┤
│ │水酸化マグネシウム │ │ │ │
│弱│ │ │ │ │
│ │アンモニア │ │ │ │
│塩│ │ │ │ │
│ │水酸化銅(㈼) │ │ │ │
│基│ │ │ │ │
│ │水酸化鉄(㈽) │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
└─┴────────┴───────┴───────┴──────┘
2 組成による塩の分類
正塩………酸の水素イオンをすべて他の陽イオンで置き換えた塩。
NaCl CaCO3
CH3COONa Na2SO4
NH4Cl
酸性塩……酸の水素イオンの一部を陽イオンで置き換えた塩。
NaHSO4 NaH2PO4
NaHCO3 Na2HPO4
塩基性塩……塩基の水酸化物イオンを他の陰イオンで一部置き換えた塩。
CuCl(OH)
MgCl(OH)
この名称は形式的なもので水溶液の性質を表しているものではない。
3 複塩と錯塩
㈰ 複塩……2種以上の塩が結合したもの。
ミョウバン サラシ粉
㈪ 錯塩……錯イオン(配位結合によりできた複雑なイオン)よりなる塩。
4 塩の生成
中和反応の他にも塩が生成する反応は多い。次のようにまとめることができる。 酸化
┌───────────── ─────────────┐
│ 還元 │
┌─┴─┐ ┐
│金属 ├──── ─── 酸 ㈫─── │
└┬┬┬┘ └┬─┬┘ 塩基性酸化物 └──┬───┘
│││ │ │
│
││└─────㈪───┐ ㈬ ㈰ │
││ │ │ │ │
│ ┌─┐ └┬┴┐│ ㈹
││ │塩├─㈷─┤ 塩││ │
㉃│㉂ └─┘ └┬┘│ │
││
㈭
└┐│ │
│└────────────┐ ㉀│ │
│ │││ │
┌┴──┐ ┐
│非金属├──── ──── 塩基 ㈯─── │
└─┬─┘ └───┘ 酸性酸化物
└──┬───┘
│ │
└─────────────㈮
酸化
─────────────┘
還元
(酸,塩基,塩,金属,酸性酸化物の順に4,4,2,1,1個)
㈰ 酸と塩基との反応。
HCl + NaOH →
㈪ 酸と金属との反応。
Mg + 2HCl →
㈫ 酸と塩基性酸化物との反応。 金属の酸化物を塩基性酸化物という。
CaO + 2HCl →
㈬ 酸と塩との反応。
CH3COONa + HCl → 弱酸の塩+強酸
NaCl + H2SO4 → 揮発性の酸の塩+不揮発性の酸
㈭ 塩基と金属との反応。
2Al + 2NaOH + 2H2O →
㈮ 塩基と非金属との反応。
Cl2 + 2NaOH →
㈯ 塩基と酸性酸化物との反応。非金属の酸化物を酸性酸化物という。
CO2 + 2NaOH →
㉀ 塩基と塩との反応。
CuSO4 + 2NaOH → 弱塩基の塩+強塩基
㈷ 塩と塩の反応。
BaCl2 + Na2SO4 →
KCl + NaNO3 → 複分解
㉂ 塩と金属との反応。
CuSO4 + Fe →
㉃ 金属と非金属との反応。
Cl2 + 2Na →
2Fe + 3Cl2 →
㈹ 酸性酸化物と塩基性酸化物との反応。
CO2 + CaO →
問い12 酸化ナトリウムNa2O,酸化カルシウムCaOなどは水と反応してそれぞれ水酸化ナトリウム,水酸化カルシウムなどを生じる。これらの変化を化学反応式で示せ。
問い13 次の塩は,それぞれどのような酸と塩基の中和で生成するか。
1 硫酸ナトリウム
2 硝酸カルシウム
3 リン酸カリウム
4 塩化バリウム
問い14 次の反応式を,それぞれ完成せよ。また,これらの反応は,塩の生成の㈰〜㈹のうちのどの型にあたる反応か。
1 MgO + H2SO4 →
2 SO3 + 2KOH →
問い15 次の反応式をそれぞれ完成せよ。また,生じた塩を分類せよ。
1 H2SO4 + KOH →
2 Fe(OH)3 + 2HCl →
1−5 塩の水溶液の性質と加水分解
塩を水に溶かすと弱い酸または塩基を生じて塩基性または酸性を示す反応を加
水分解という。(加水解離ともいう)
●●● 実験5 塩の水溶液の性質 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 塩の水溶液の液性について調べる。
準備 塩化ナトリウム,酢酸ナトリウム,硫酸水素カリウム
硫酸銅(㈼),炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム
万能pH試験紙,試験管6,蒸留水,薬さじ3,ガラス棒,ピンセット
方法
1. 各物質の少量を薬さじで試験管にとり,蒸留水を加えて溶かす。
2. 各水溶液を試験紙につけ液性を観察する。比色の判定で2と3の中間の色のと
きは,2に近ければ2(+),3に近ければ3(-)とする。
┌───┬────┬────┬────┬────┬────┬────┐
│化学式│ │ │ │ │ │ │
├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤
│液性 │ │ │ │ │ │ │
└───┴────┴────┴────┴────┴────┴────┘
考察
各塩を生じる反応式を書き,もとの酸・塩基の強弱を考えよ。
酢酸ナトリウムの加水分解〜次の平衡はどちらに傾いているか。
CH3COOH + H2O CH3COO- + H3O+
NaOH Na+ + OH-
CH3COONa + H2O CH3COO- + Na+ + H+ + OH-
CH3COO- + H+ + Na+ + OH-
まとめ
┌────┬───────┬─────┐
│加水分解│もとの酸・塩基│ 液性 │
├────┼──┬────┼─────┤
│ しない│強酸│強塩基 │ 中性 │
│ しない│弱酸│弱塩基 │ 中性 │
├────┼──┼────┼─────┤
│ する │強酸│弱塩基 │ 酸性 │
│ する │弱酸│強塩基 │ 塩基性 │
└────┴──┴────┴─────┘
問い16 次の各塩の組成式を書き,水溶液を酸性,中性,アルカリ性を呈するものに分類せよ。
㈰ 硝酸カリウム ㈪ リン酸ナトリウム ㈫ 炭酸水素ナトリウム
㈬ 硫酸銅(㈼) ㈭ 塩化鉄(㈽) ㈮ 塩化アンモニウム
酸性…………( )
中性…………( )
アルカリ性…( )
1−6 緩衝溶液
1 電離平衡
酢酸の電離平衡を表す式を記せ。
酢酸の平衡定数を表す式を記せ。
K=─────────
酢酸の電離定数Kaを表す式を記せ。この値は25℃で1.75×10-5である。
Ka=────────
濃度cmol/lの酢酸の水溶液の電離度をαとするとき,CH3COOH,H+および
CH3COO-の濃度はそれぞれ次のように表される。
CH3COOH CH3COO- + H+
初め c 0 0 (mol/l)
平衡時 c−cα cα cα (mol/l)
また,これより酢酸の電離定数は次のように表される。
[CH3COO-][H+]
Ka =────── =────
[CH3COOH]
ここでαが小さいときは1−α≒1としてよいので,
Ka = α=
このことから酢酸の電離度は濃度が小さいほど(大きい,小さい)ことがわかる。
また,水素イオン濃度は次のように記される。
[H+]=cα=c×(Ka/c)1/2 =(Kac)1/2
問い16 ある温度で,0.10mol/lの酢酸溶液は1.5%電離している。以下の問い
に答えよ。
1 この溶液の中の[H+]は何mol/lか。
2 酢酸の電離定数Kaを求めよ。
3 0.0040mol/lのときの電離度を求めよ。
問い17 アンモニア水中の電離平衡 NH3 + H2O NH4+ + OH- において,アン
モニアの電離定数はKb=[NH4+][OH-]/[NH3] のように表される。また,アンモ ニアの電離定数は25℃で 1.8×10-5mol/lである。√1.8=1.3
1 0.10mol/lのアンモニア水中のアンモニアの電離度はいくらか。
2 0.10mol/lのアンモニア水中の[OH-]はいくらか。
2 緩衝溶液
弱酸とその塩の混合溶液や弱塩基とその塩の混合溶液は,酸や塩基が少々加わってもpHがほとんど変化しないので緩衝溶液と呼ばれる。
例)酢酸+酢酸ナトリウム
◎ 酸を加えたとき。 CH3COO- + H+ → CH3COOH
◎ 塩基を加えたとき CH3COOH + OH- → CH3COO- + H2O
問い18 電離定数が 1.8×10-5mol/lである0.01mol/l酢酸の電離度とpHを求めよ。ただし,√18=4.2,log4.2=0.62とする。
また,この酢酸溶液100〓に,酢酸ナトリウムを2×10-3mol溶解すると,水溶液の水素イオン濃度とpHはいくらになるか。ただし,log9.0=0.95とする。
問い19 アンモニア水の電離反応において電離定数をKb ,電離度をα,アンモニアの全濃度をcとして以下の問いに答えよ。
1 Kb をcとαで表せ。
2 0.10mol/lのアンモニア水の水酸化物イオンの濃度は25℃でいくらか。ただ し,アンモニアの電離定数Kb の値を25℃で2×10-5mol/lとする。
3 0.10mol/lのアンモニア水100〓 に塩化アンモニウムの固体0.01molを加え ると25℃での溶液のpHはいくらか。ただし,塩化アンモニウムは溶液中で完全 に電離し,溶液の体積は塩化アンモニウムを加えることにより変化しないもの とする。log2=0.30 ,log3=0.48
略解 2 1.4 ×10-3mol/l 3 9.3
1−7 中和滴定
1 中和反応における量的関係。
例 NaOH + HCl → NaCl + H2O
1mol 1mol
40g 36.5g
この反応では酸(塩酸)と塩基(水酸化ナトリウム)が1モルずつ反応する。問い20 以下の問いに答えよ。
1 0.1mol/lの塩酸50〓と反応する0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液は何〓か。2 0.2mol/lの塩酸100〓と反応する0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液は何〓 か。
3 0.2mol/lの塩酸100〓と反応した水酸化ナトリウム溶液は50〓だった。この 水酸化ナトリウム溶液の濃度は何mol/lか。
2 中和滴定
中和反応の量的関係を利用して,濃度未知の溶液の濃度を決定する方法を中和滴定という。
●●● 実験6 中和滴定 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 中和滴定により食酢の濃度を決定し,その過程で中和滴定の操作および原 理を理解する。
準備 ホールピペット,ビュレット,メスフラスコ,三角フラスコ3
マグネッチックスターラー,フェノールフタレイン溶液
ビーカー,ガラス棒,安全ピペッター
方法A 0.050 mol/lシュウ酸標準溶液を作る。
1. 0.050 mol/lシュウ酸標準溶液を100〓 作るにはシュウ酸二水和物を何gと ればよいか計算せよ。
シュウ酸の式量 (COOH)2・2H2O=
2. 1.で得たシュウ酸をロートを使って100〓 のメスフラスコに入れ完全に溶け てから蒸留水を加えて100〓 とする。
方法B 約0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を作る。
1. 0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を200〓 作るには水酸化ナトリウムの 何g を水に溶かして200〓 にすればよいか。
水酸化ナトリウムの式量 NaOH=
2. 1.で求めた量の水酸化ナトリウムを200〓 のビーカーを用いて電子天秤では かりとり,蒸留水を加えて溶かして約0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を 作れ。そのときガラス棒でかきまぜよ。
方法C ホールピペットの使い方
1. ホールピペットの先端を取ろうとする溶液の中に入れて安全ピペッターを用 いてとる。このとき,先端を溶液から出してはいけない。
Aを押さえて大球をへこまし,Sを押さえると溶液が上昇する。
2. 溶液をホールピペットの標線よりやや上まであげて,上端を人指し指で押さ えて液面が標線の位置にくるまで溶液をもどす。このときメニスカスの下の線 が標線と一致するようにする。
3. これを別の容器の上に先端をもっていき,Eを押さえてホールピペット内の 液を自然落下させる。このときホールピペットの標線より上をもつ。
4. 最後の数滴は先端の細くなったところにたまるので次のようにして出す。
左手でEを押さえ,右手の親指で小球の小穴を2回ほど押す。
[安全ピペッターのない場合] 上端を人指し指で押さえ,中央部の太くなってい る部分を他方の手で握って暖めると,中の液は膨張した空気により押し出され る。最後の1滴は容器の器壁 に触れさせてとる。
方法D 方法Bの約0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の濃度を測定する。
1. ホールピペットで方法Aで作った0.05mol/lシュウ酸標準溶液をそれぞれ10 〓ずつ3個の三角フラスコにとる。これらにフェノールフタレイン溶液を1滴 ずつ加える。
2. 活栓を「止め」の 位置にする。注意:テフロン活栓でない場合にはワセリ ンを塗る。
3. ビュレットの上からロートを用いて方法Bで作った約0.1mol/l水酸化ナト リウム水溶液を注ぎ入れる。このとき溶液はできるだけ多量にとるが目盛りよ り上になってはいけない。また0に合わせる必要はない。
4. 次に100〓ビーカーをビュレットの下に置き,コックが確実に作動するか確 かめる。
5. ロートをとってから,このときの目盛りを最小目盛りの10分の1 まで読み, 表に記入する。(例1.20〓のように)
6. (ここではじめてビュレットの下に三角フラスコをもっていく)1.の三角フ ラスコの1つに回転子をいれ,おだやかに回す。
7. コックを少しずつ開いて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し,中和反応を進め ていく。
8. 三角フラスコの溶液がうすい赤色になったら中和反応が完了しているので, そのときを中和の終点とし,ビュレットの目盛りを読み,記録する。
9. 中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の量を計算する。
10. ビュレット内の水酸化ナトリウム水溶液をビーカーに少し捨て,1回目の終 点と2回目の開始点が同じ目盛りにならないようにする。
11. 3.〜10. をさらに2回繰り返し,平均を出す。
2回目の値は1回目の値から予想されるので,その手前までは素早くビュレ ット内の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し,最後の1〓くらいを慎重におこ なう。3回目についても同様である。
結果 表1 水酸化ナトリウム水溶液の量(〓)
┌──────┬─────┬─────┬─────┐
│ │ 1回目 │ 2回目 │ 3回目 │
├──────┼─────┼─────┼─────┤
│終点の読み │ │ │ │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┐
│開始点の読み│ │ │ │ 平 均 │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ 差 │ │ │ │ │
└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
方法E 食酢を10倍にうすめる。
1. 100〓 のメスフラスコに食酢をホールピペットで10.0〓とり蒸留水を加えて 100〓 とする。
方法F 10倍にうすめた食酢の濃度を求める。
1. 方法Eでうすめた食酢をホールピペットで10〓ずつ3本の三角フラスコにと り,フェノールフタレンイン溶液を1滴加える。
2. 方法Dと同じような操作をして中和滴定を3回行う。ビュレットには,方法 Dと同様に方法Bで作った約0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を入れる。 (しかし,この時点では方法Dによりこの水酸化ナトリウム水溶液の濃度は分 かっている。)
3. 結果を表に記入する。
結果 表2 水酸化ナトリウム水溶液の量(〓)
┌──────┬─────┬─────┬─────┐
│ │ 1回目 │ 2回目 │ 3回目 │
├──────┼─────┼─────┼─────┤
│終点の読み │ │ │ │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┐
│開始点の読み│ │ │ │ 平 均 │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ 差 │ │ │ │ │
└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
考察
1. 方法Dの結果から水酸化ナトリウム水溶液の濃度はいくらか計算せよ。
2. うすめた食酢およびもとの食酢の濃度は何mol/lか。
3. 食酢の中に含まれている酸のすべてを酢酸と考えると,もとの食酢中の酢酸 の重量%はいくらか。ただし,食酢の密度を1.01g/cm3 とする。
表3 各班の値
┌─┬───────┬───────┬───────┐
│班│水酸化ナトリウムの濃度│食酢の濃度 │食酢の重量% │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│1│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│2│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│3│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│4│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│5│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│6│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│7│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│8│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│9│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│10│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│11│ │ │ │
├─┼───────┼───────┼───────┤
│12│ │ │ │
└─┴───────┴───────┴───────┘
発展 他の物質についても同様に中和滴定を行い濃度を求めてみよう。
試料( )
┌──────┬─────┬─────┐
│ │ 1回目 │ 2回目 │
├──────┼─────┼─────┤
│終点の読み │ │ │
├──────┼─────┼─────┼─────┐
│開始点の読み│ │ │ 平 均 │
├──────┼─────┼─────┼─────┤
│ 差 │ │ │ │
└──────┴─────┴─────┴─────┘
試料の濃度:
1−8 中和滴定曲線
1 中和滴定曲線
●●● 実験24 中和滴定曲線 ●●●
┌────────────────────────────────┐
│実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)│
│天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)│
│班 ( 班),共同実験者( │
└────────────────────────────────┘
目的 中和滴定曲線を描くことにより,中和滴定の原理をより深く理解する。
準備 ビュレット,トールビーカー100〓,メチルオレンジ,ロート
マグネッチックスターラー,フェノールフタレイン溶液
0.10mol/l塩酸(分注器で配布),pHメーター
0.10mol/l水酸化ナトリウム水溶液(100〓ビーカーで配布)
方法
1. 100〓トールビーカーに,分注器で1.00mol/l塩酸10〓をとり,回転子を入 れ,マグネチックステアラーの上にのせる。メチルオレンジを1〜2滴加える。 2. ビュレットに1.00mol/l水酸化ナトリウム水溶液を入れ,液面をゼロにあわ せる。
3. pHメーターをビーカーに入れ,水酸化ナトリウム水溶液を適当量滴下するご とに,pHを読み,記録する。滴下量は次のような量を目安とする。
pH 〜2 1〓 pH 2〜3 0.5〓 pH 3〜11 0.1〓
pH 11〜12 0.2〜0.5〓 pH 12〜 1〜5〓
pHが2を越え,メチルオレンジが黄色になったら,フェノールフタレイン溶液 を1〜2滴加える。
なおpHは,はじめのうちはほとんど変化しない。故障ではない。
┌──┬──┬──┬──┬──┬──┬──┬──┬──┐
│(〓)│ pH │ 色│(〓)│ pH │ 色│(〓)│ pH │ 色│ pH
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
├──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
└──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┘
考察
1. 結果を方眼紙に書いてみよう。
発展
他の組合せについても実験してみよう。
中和滴定曲線……酸・塩基の中和滴定において,加えた酸溶液または塩基溶液の体積と,混合溶液のpHの関係をグラフにしたものを中和滴定曲線という。
㈰ 0.1M-HClと0.1M-NaOH ㈪ 0.1M-HClと0.1M-NH3
14│ 14
13│ 13
12│ 12
11│ 11
10│ 10
pH 9│ pH 9
8│ 8
7├───────────── 7├─────────────
6│ 6
5│ 5
4│ 4
3│ 3
2│ 2
1│ 1
0└──────┼─────── 0┴──────┼───────
0 10 NaOH溶液(〓) 0 10 アンモニア水(〓)㈰ 強酸と強塩基 ㈪ 強酸と弱塩基
はじめは0.1mol/lの酸であるからpH≒1 。 はじめはpH≒1 。
10〓で中和点(当量点)に達し,最終的には 中和点以後ゆるやかな曲線と
13になる。 なる。
㈫ 0.1M-CH3COOH と0.1M-NaOH ㈬ 0.1M-CH3COOH と0.1M-NH3
14│ 14
13│ 13
12│ 12
11│ 11
10│ 10
pH 9│ pH 9
8│ 8
7├────────────── 7├─────────────
6│ 6
5│ 5
4│ 4
3│ 3
2│ 2
1│ 1
0└──────┼─────── 0┴──────┼───────
0 10 NaOH溶液(〓) 0 10 アンモニア水(〓)㈫ 弱酸と強塩基 はじめはpH≒3 。 ㈬ 弱酸と弱塩基
滴定曲線から次のことが理解できる。
ア. 酸・塩基間に当量関係が存在すること。
イ. 酸・塩基の強弱。
ウ. ㈫の曲線の平坦部より,弱酸の塩と弱酸の混合水溶液には緩衝作用がある こと。
エ. ㈫の当量点より弱酸と強塩基の中和によってえられる塩の水溶液は塩の加 水分解によって弱塩基性を示す。
オ. ㈫では中性点(pH=7)と当量点(反応式に対応した量)が異なり,滴定の終点 は当量点が求められるように指示薬の選択が行われる。
カ. 当量点の前後の垂直部より,変色域のかなり広い指示薬でも当量点が求め
られること。
3 中和滴定と指示薬の選択
中和反応と指示薬
┌──────┬──────┬──────────┬────────┐
│ 酸 │ 塩基 │フェノールフタレイン│メチルオレンジ │
├──────┼──────┼──────────┼────────┤
│ 強酸 │ 強塩基 │ ○ │ ○ │
├──────┼──────┼──────────┼────────┤
│ 強酸 │ 弱塩基 │ × │ ○ │
├──────┼──────┼──────────┼────────┤
│ 弱酸 │ 強塩基 │ ○ │ × │
├──────┼──────┼──────────┼────────┤
│ 弱酸 │ 弱塩基 │ × │ × │
└──────┴──────┴──────────┴────────┘
問い21 次の酸と塩基の組合わせ1〜3による中和滴定で使用する指示薬は,㈰㈪のうちでどれが適当か。
1 塩酸と水酸化カリウム水溶液 2 硫酸とアンモニア水
3 酢酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液
㈰ フェノールフタレイン溶液 ㈪ メチルオレンジ
問い22 濃度不明の塩酸10〓に,指示薬としてメチルレッドを2〜3滴加えて,
0.20mol/lの水酸化バリウム水溶液で中和滴定すると,その5.5〓 が必要であ った。次の問いに答えよ。
1 中和の終点で,指示薬は何色を呈するか。
2 塩酸のモル濃度を求めよ。
問い23 ある量のドライアイスを完全に気化させて,水酸化ナトリウム水溶液200〓にすべて吸収させた。その後,水でうすめて正確に500〓とした。いま,その うちの10.00〓をとり,0.100mol/lの塩酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定したところ14.00〓を要した。続いてこの溶液に指示薬としてメチルオレ ンジを加え,同じ塩酸で滴定したところ6.00〓を要した。次の問いに答えよ。
1 下線部の反応を化学反応式で記せ。
2 フェノールフタレインを指示薬として滴定したときの反応を反応式で記せ。3 メチルオレンジを指示薬として滴定したときの反応を反応式で記せ。
4 気体を吸収させる前の水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度はいくらか。
5 はじめのドライアイス小片の質量はいくらだったか。
1−9 グラム当量と規定度
硫酸と水酸化ナトリウムとの反応では,水酸化ナトリウムの物質量は硫酸の2倍あると,ちょうど中和反応が完了する。そこで硫酸の物質量をはじめから2で割ったものを単位とする量を用いるとこれらは同じ量で中和反応が完了する。
このような考えで用いられる単位がグラム当量であり規定度である。
グラム当量……酸・塩基の1mol の質量をそれぞれの価数で割った値を酸・塩基
の1グラム当量という。
表 酸・塩基の1グラム当量
┌────────┬────────┬───┬─────────┐
│ 物 質 │1molの質量(g)│価数n│1グラム当量(g)│
├─┬──────┼────────┼───┼─────────┤
│ │HCl │ 36.5 │ 1 │ 36.5 │
│酸├──────┼────────┼───┼─────────┤
│ │H2SO4 │ 98 │ 2 │ 49 │
├─┼──────┼────────┼───┼─────────┤
│塩│NaOH │ 40 │ 1 │ 40 │
│基├──────┼────────┼───┼─────────┤
│ │Ca(OH)2 │ 74 │ 2 │ 37 │
└─┴──────┴────────┴───┴─────────┘
規定度……水溶液1l中に溶解している溶質のグラム当量数を規定度という。
Nを用いることもある。
問い24 次の物質の1グラム当量は何gか。H=1,S=32,O=16,K=39Ca=40,P=31,C=12
1 H2SO4 2 KOH 3 Ca(OH)2 4 H3PO4 5 CH3COOH
問い25 次の各問いに答えよ。
1 水酸化ナトリウム 4.0gは何グラム当量か。
2 標準状態で5.6lのアンモニアは何グラム当量か。
3 重量百分率50%の希硫酸の密度は1.4g/〓である。この希硫酸100〓中にH2SO4 は何グラム当量含まれているか。
問い26 96%の硫酸の比重は15℃で1.84である。
1 この硫酸は何規定か。
2 この溶液15〓の中にH2SO4は何グラム当量含まれているか。
問い27 以下の問いに答えよ。
1 0.23Nの硫酸50〓と中和する0.40Nの水酸化ナトリウム溶液は何〓か。
2 0.20Nの硫酸50〓と中和するアンモニアは,0℃,1atmで何lか。
問い28 以下の問いに答えよ。
1 分子量Mの2価の酸5gと中和する0.5規定NaOH溶液は何〓か。
2 二酸化炭素のa〓(標準状態)を0.10規定の水酸化バリウム溶液100〓に通 した。残った水酸化バリウムを0.10規定塩酸で中和したら,25〓を要した。a はいくらか。
1−9 練習問題
練習1 次の物質の化学式を書き,水溶液の性質を酸性,中性,塩基性のいずれを示すか示せ。また,その理由も示せ。
1 酢酸ナトリウム 2 炭酸ナトリウム
3 炭酸水素カリウム 4 硫酸カリウム
練習2 次の物質の0.1mol/lの水溶液をpHの小さいものから順に並べて化学式 で記せ。
1 塩化ナトリウム 2 塩化水素 3 酢酸ナトリウム
4 水酸化ナトリウム 5 塩化アンモニウム
練習3 次の各問いに答えよ。log3.0=0.48
1 0.10mol/l塩酸10〓に水を加えて100〓 ,1000〓にしたときのpHを求めよ。 ただし,電離度は1.0 とする。
2 0.10mol/lの水酸化ナトリウム水溶液のpHはいくらか。ただし電離度は1.0
とする。
3 0.10mol/l塩酸10〓と0.10mol/lの水酸化ナトリウム水溶液20〓を混合した 溶液のpHはいくらか。
練習4 次の各問いに答えよ。
1 水酸化ナトリウムの固体2.0gに0.050mol/lの硫酸を加えて,完全に中和す るには硫酸は何〓必要か。
2 0.10mol/lの酢酸の電離度は1.3×10-2である。この酢酸水溶液の水素イオン 濃度はいくらか。また,この酢酸水溶液10〓を完全に中和するためには,0.10 mol/lの水酸化ナトリウム水溶液は何〓必要か。
練習5 約0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液10.0〓を0.050mol/lのシュウ酸水溶液で滴定したところ12.0〓を要した。また食酢20.0〓に水を加えて100〓 とし,その10.0〓を上記の水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると,12.5〓 を必要とした。次の各問いに答えよ。CH3COOH=60,
1 約0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液の正確なモル濃度を求めよ。
2 この食酢中の酢酸のモル濃度を求めよ。
3 この食酢中の酢酸の重量%濃度を求めよ。ただし,密度は1.0g/c〓とする。
練習6 次のガラス器具1〜4を中和滴定に使用するさいの正しい使用法として最適なものを,㈰〜㈭の中からそれぞれひとつずつ選べ。
1 ピペット 2 ビュレット 3 メスフラスコ 4 三角フラスコ
㈰ 蒸留水で洗って,水でぬれたまま用いてもよい。
㈪ 蒸留水で洗って,加熱乾燥して用いる。
㈫ 蒸留水で洗ったのち,加熱してはいけないが,乾燥して用いなければなら ない。
㈬ 乾燥していないとき,蒸留水で洗ったのち,さらに中に入れる溶液で数回 洗って用いてもよい。
㈭ 水道水で洗っただけで用いてよい。
練習7
1 0.001mol/l硫酸100〓と0.01 mol/l水酸化ナトリウム水溶液100〓を混合し た溶液のpHを求めよ。log2=0.3
2 25℃で0.01mol/lのアンモニア水の電離度は0.01である。pHはいくらか。 log1.3=0.1
練習8 以下の問いに答えよ。
1 一般式HAの酸の電離平衡式を記し,酸HAの電離定数Kaを式で表せ。
2 c mol/lの弱酸HAの水溶液があり,この酸の電離度αが1に比べて無視 できるほど小さいとき,αをcとKaで表す式を求めよ。また水素イオン濃度 をcとKaで表す式を求めよ。
3 0.10mol/lで電離度α=0.015の酢酸の水素イオン濃度[H+]はいくらか。4 3の酢酸の電離定数Kaを求めよ。2の結果を使う。
5 0.0040mol/lmolのときの電離度を求めよ。
練習9 酢酸の電離定数Kaを1.8×10-5mol/lとする。いま0.20 mol/lの酢酸10〓と0.20mol/lの酢酸ナトリウム10〓を混合するとpHはいくらになるか。
log1.8=0.26
練習12 次の各問いに答えよ。電離度の書いていない場合は電離度1とする。
1 1規定の塩酸のpHはいくらか。( ) Cl=35.5
2 1規定の水酸化ナトリウムのpHはいくらか。( ) Na=23
3 pH 2.0の水溶液中の水素イオン濃度はいくらか。( )
4 pH 2.0の水溶液を 100倍にうすめた水溶液のpHはいくらか。( )5 1規定の酢酸の電離度は15℃において,0.012である。この溶液のpHはい くらか。ただし,log1.2=0.08 とする。( )
練習14 次の実験に関する説明をよく読んで問い1〜5に答えよ。
水酸化ナトリウムの純度を決定するために,0.935gの水酸化ナトリウムを水に溶かして正確に1lとした。またシュウ酸H2C2O4・2H2O 1.26gをとって水に溶かして正確に 500〓とした。このシュウ酸水溶液 10.0〓 を三角フラスコにとり,指示薬を加えてから水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,18.0〓を要した。ただし水酸化ナトリウムに含まれる不純物は中和滴定に関係しないものとする。
1 濃度の正確な水溶液をつくるときに必ず用いるガラス器具がある。それはな にか。
2 一定体積の溶液を正確に10〓採取するときに必ず用いるガラス器具がある。 その名称を答えよ。
3 シュウ酸水溶液の濃度は何 mol/lか。
4 この中和滴定に用いる指示薬として適当なものは次のどれか。
㈰ メチルオレンジ ㈪ フェノールフタレイン
㈫ メチルオレンジでもフェノールフタレインでもよい。
㈬ メチルオレンジでもフェノールフタレインでも不適当。
5 この水酸化ナトリウムの純度は,何%か。
練習15 次の物質を化学式で示し,水溶液の性質(酸性,アルカリ性,中性)も記せ。
1 塩化カリウム ( )( )
2 硫酸アンモニウム ( )( )
3 炭酸水素ナトリウム( )( )
4 硫酸水素ナトリウム( )( )
練習15 次の溶液のpHを計算せよ。
1 0.0001mol/lの塩酸 (pH= )
2 0.001mol/lの水酸化ナトリウム溶液 (pH= )
3 電離度0.01で0.001mol/lの酢酸溶液 (pH= )
練習16 次の計算をせよ。
1 水酸化ナトリウムの固体4.0gに0.05mol/lの硫酸を加えて,完全に中和する には,硫酸は何〓必要か。
2 98%の硫酸の比重は1.84である。6.0 規定の希硫酸500〓を作るには,98%
硫酸が何〓必要か。
練習17 0.10N硫酸100〓に0.20N水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。 得られた硫酸ナトリウム水溶液のモル濃度はいくらか。
練習18 次の中和の化学反応式を完成せよ。
1 CH3COOH + KOH →
2 CO2 + Ca(OH)2 →
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