4-1 水溶液の電気分解
電気分解……電解質の水溶液などに直流電流を通じて化学変化をおこすこと。(例1)希硫酸の電気分解
白金Ptを電極として希硫酸に直流電流を流す。
1 電極
①電気の良導体 ②電解液,電解生成物と反応しない物質。
例) Pt,Cu
陽極……電気分解において酸化される極。
2 電気分解生成物
電解液
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陰極
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陽極
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備考
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電極
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電解生成物
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電極
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電解生成物
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H2O
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Pt
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H2
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Pt
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O2
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HCl
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Pt
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H2
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Pt
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Cl2
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希H2SO4
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Pt
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H2
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Pt
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O2
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水の電解
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希NaOH
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Pt
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H2
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Pt
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O2
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水の電解
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濃NaCl
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Fe
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H2(NaOH)
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C
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Cl2
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隔膜法
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濃NaCl
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Hg
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Naアマルガム
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C
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Cl2
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水銀法
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CuSO4
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Pt
(Cu)
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Cu
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Pt
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O2
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Cu
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Cu2+
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電解精錬
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溶融Al2O3
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C
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Al
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C
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CO
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(氷晶石)
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溶融NaOH
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Fe
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Na
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Pt
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O2
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AgNO3
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Ag
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Ag
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Ag
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Ag+
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K[Ag(CN)2]
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Ag
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Ag+
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電気メッキ
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電気良導体 Ag
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3 陰イオンの放電順序
Cl->OH->NO3->SO44-
2Cl → Cl2 + 2e-
4OH- → 2H2O + 02 + 4e-
4 陽イオンの放電順序
イオン化傾向の小さいもの。
ただし,Znよりイオン化傾向の小さい金属は析出する。
4-2 電気分解ににおける量的関係
●●● 実験6 電気分解(ファラデーの法則) ●●●
実施日 年 月 日 曜日 限,場所( 教室)
天気( ),室温( ℃),湿度( %),気圧( mmHg)
班 ( 班),共同実験者( )
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目的 水を電気分解して,流れた電気量と物質の生成量との関係を調べる。
準備 電解装置,直流電流計(0~300mA),導線3本
0.5mol/l水酸化ナトリウム水溶液
方法
1. 図のように配線し,配線が正しいかどうかを必ず確かめる。
2. 電解装置に水酸化ナトリウム水溶液を入れる。
3. 試験管をプラピンセットで挟み,空気が入らないように倒立させる。
4. (予備電解を行って練習する)スイッチを入れ,数分間電解を行う。
このときの電解液の中でどのようなことがおこっているか。
( )
5. (本電解をおこなう)
1 電解中の電流の強さを30秒おきに計り,記録する。
2 2分経過すると電源が切れるので,気泡が上がりきるのを待って,両気体 の体積を読み,表に記録する。
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30
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60
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90
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120
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平均
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陽極
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陰極
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2分
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4分
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6分
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8分
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10分
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12分
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6. 水温t(℃)(発生した気体の温度は水温と等しいとみなす),大気圧Pa
mmHgを記録する。
結果
水温t ( )℃
大気圧Pa ( )mmHg
水蒸気圧Pw ( )mmHg
発生気体の圧力P=Pa -Pw =( )mmHg
考察
1. 電気量[クーロン]は電流[A]×時間[秒]で表される。流れた電気量と,標準
状態に換算した気体の体積との関係を表に記せ。
時間(分)
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2
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4
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6
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8
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10
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電気量(クーロン)
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水素の体積(〓)
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酸素の体積(〓)
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2. 流れた電気量と発生した気体の体積との関係を,水素と酸素のおのおのにつ いて次のグラフに表せ。
体
積
[〓]
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電気量[クーロン]
3. 同じ電気量で発生した水素と酸素との体積比をグラフから求めよ。
4. 水素11.2lを発生させるのに必要な電気量をグラフから求めよ。この値をx とすると実験誤差は次のように表される。
|96500-x|
誤差=
|
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×100
|
96500
まとめ
電気分解における流れた電気量と析出する物質の量との関係は1833年にイギリスの科学者ファラデーにより発見された。
電気量の単位としてはクーロン[C]が用いられる。また,9.65×104[C]を1[F] という。
① 同じ物質の析出する物質の量は流れた電気量に比例する。
② 異なった物質については,同じ電気量で析出する物質量はそのイオンの価数 に反比例する。
酸素の体積が減少したのは,O3やH2O2などが生成したからである。
問い1 Cu2+,Al3+の1個がもつ電気量はそれぞれ何Cか。
問い2 白金を用いて,硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電気分解したところ,陰極に銅が
0.10mol析出した。
1 流れた電気量は何Fか。また,何Cか。
2 陽極に発生した酸素の質量は何gか。また,体積は標準状態で何lか。
3 1.0Aの電流で電気分解したとすると,銅0.10molを析出させるのに何時間か かるか。
問い3 次の各問いに答えよ。
1 1クーロンの電気量をながすと銀は何g析出するか。
2 硝酸銀水溶液と硝酸銅(Ⅱ)水溶液にそれぞれ白金電極を浸し,直列につない で電気分解したところ,銀が10.8g析出した。銅は何g析出するか。また,硝酸銅(Ⅱ)水溶液から発生する気体の体積は標準状態で何lか。
3 硫酸銅(Ⅱ)水溶液1lに,白金電極を浸して電気分解した。銅(Ⅱ)イオンをすべて銅にかえるのに96.5クーロンの電気量を必要とした。このとき水溶液のpHは次のどの値に最も近いか。 3,5,7,9,11
実験 電気分解(ファラデーの法則)
目的 水を電気分解して,流れた電気量と物質の生成量との関係を調べる。
準備 電解装置,直流電源,直流電流計(0~300mA)
導線3本,0.5mol/l水酸化ナトリウム水溶液
操 作
1. (電解装置に水酸化ナトリウム水溶液を入れる)底のゴム栓がしっかりはまっていることを確か める。両コックを開きロートから徐々に液を入れ,液面がコックを越したら液 を入れるのを止める。
2. 電源のスイッチが切れているのを確かめる。次に図のように配線し,配線が 正しいかどうかを必ず確かめる。
3. (予備電解を行って練習する)電解装置のコックを開いたままスイッチを入 れ,数分間電解を行う。この間に電流の強さを50~200mA の間で一定に保つよ うにスライド抵抗器を調節する。
このときの電解液の中でどのようなことがおこっているか。
( )
4. 本電解を行う。
1 電解装置のコックを閉じる。時計係の合図により,スイッチを入れ,電解 を始める。
2 3分間ごとにスイッチを切り,気泡が上がり切るのを待つ。ロートを上下 させて液面の高さをそろえて両気体の体積を読み,表に記入する。
3 電流の強さi(A),室温t(℃)(発生した気体の温度は室温と等しい とみなす),大気圧Pa mmHgを記録する。
結果
電流i ( )A
室温t ( )℃
大気圧Pa ( )mmHg
水蒸気圧Pw ( )mmHg
発生気体の圧力P=Pa -Pw ( )mmHg
4-3 電気分解の応用
いずれも工業的なものである。
1 塩化ナトリウム水溶液の電気分解
目的……水酸化ナトリウムや塩素をつくる。
電解液…… NaCl + 水
陽極……炭素
反応および生成物
2Cl- → Cl2 + 2e-
陰極……鉄製容器
反応および生成物
2H+ + 2e- → H2
OH-イオンがたまり,この溶液から水酸化ナトリウムが得られる。
特徴
陽極付近の水溶液と陰極付近の水溶液が混じらないように隔膜で工夫した
隔膜法が用いられる。
2 銅の電解精錬
目的……粗銅(約99%)を純銅(99.99 %)にする。
電解液……硫酸酸性の硫酸銅(Ⅱ)水溶液
陽極……粗銅板
反応および生成物
Cu → Cu2+ + 2e-
陰極……純銅板
反応および生成物
Cu2+ + 2e- → Cu
特徴
陽極泥…粗銅中に含まれていた,金銀が陽極の下にたまる。
3 アルミニウムの精錬
目的……酸化アルミニウムからアルミニウムを取り出す。
電解液……氷晶石Na3[AlF6]と酸化アルミニウムの融解物。
NaAlO2 + 2H2O Al(OH)3 + NaOH
Al2O3 2Al3+ + O4-
陽極……炭素
反応および生成物
1
O4- → O2 + 2e-
|
2
2C + O2 → 2CO
陰極……炭素
反応および生成物
Al3+ + 3e- → Al
4 塩化ナトリウムの融解塩電解
目的……金属ナトリウムの製造
電解液……融解した塩化ナトリウム
陽極……炭素
反応および生成物
1
Cl- → Cl2 + e-
|
2
陰極……炭素
反応および生成物
Na+ + e- → Na
《まとめ》
金属をその鉱石から取り出すことを製錬という。
イオン化傾向の大きな金属の化合物は還元されにくく,酸化物や塩化物を融解し,電気分解で還元する。
例:Al Mg Na Ca K
問い4 塩化ナトリウム水溶液の電気分解を1つにまとめた化学反応式で表せ。
問い5 ボーキサイトからアルミニウムが得られる反応の経路を次に示す。ア~ウに相当する物質の化学式を書け。
NaOH H2O 氷晶石
Al2O3・nH2O →( ア )→( イ )→( ウ )→ Al
強熱 融解塩電解
問い6 硫酸銅水溶液をを用いて電気分解した。
1 陽極,および陰極での変化をイオン反応式で記せ。
2 銅を3.2g析出させるには2Aの電流を何秒間流せばよいか。Cu=64
問い7 炭素を陽極,鉄を陰極として,塩化ナトリウム水溶液の電気分解を隔膜法で行った場合について,次の各問いに答えよ。
1 各極に移動するイオン名と各極で発生する気体名を書け。
2 陽極付近の溶液は酸性か,アルカリ性か,中性か。また,その理由を簡単に 述べよ。
3 電気分解後の陰極付近の溶液を濃縮すると何が得られるか。また,その理由 を陰極反応との関係において述べよ。
4 塩化ナトリウム水溶液に3.86アンペアの電流を5時間通じて電気分解した。 ① 陽極で発生する気体の物質量はいくらか。
② 陰極に発生する気体の体積は27℃, 36気圧の下で何lになるか。
練習2 以下の文を読んで1~3に答えよ。1F=9.65×104 クーロン
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B
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①
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C
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|||||
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D
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②
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||||
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+
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可変抵抗器F
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-
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電源A
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電流計E
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白金板を電極とする3個の電解槽B,C及びDを上図のように連結し,電解槽 Bには希硫酸,Cには硫酸銅水溶液,Dには食塩水を入れた。電源Aとしては鉛蓄電池をいくつか直列につないだものを用い,電流計Eがつねに5.00アンペアを示すように可変抵抗器Fを調整しながら4時間17分20秒電解をおこなったところ ,Cの陰極の質量は6.35g 増加した。このあいだ,回路①,回路②の電気抵抗は変わらないものとすると,①の回路には( イ )ファラデー,②の回路には( ロ )ファラデーの電気量が流れたことになる。この電解によってBの陰極から( a )が,Bの陽極から( b )が,またDの陰極から( c )が,Dの陽極から( d )がいずれも気体として発生する。発生した気体は水に溶解せず,また副反応は起こらないものと仮定すれば,Bの陽極で発生した気体の体積は27.0℃,1気圧において( ハ ) ,Dの陽極で発生した気体の体積は同じ温度,圧力において( ニ ) である。このときDの電解槽溶液中には(
ホ )gの( e )が生成するが,これを食塩水にもどすには,1規定の(
f )を( ヘ ) 必要とする。また電源Aの鉛蓄電池の正極では放電にかかわった鉛の酸化数は( い )から( ろ )に変化し,電池の中の硫酸は全部で( ト )g減少する。
1 ( a )~( f )には,適した物質名を化学式で示せ。
2 ( イ )~( ト )には,適した数値を有効数字3桁まで記入せよ。
3 ( い )及び( ろ )には,適した数値を記入せよ。
練習5
次の図のように三つの電解槽を直流電源につなぎ,一定時間電流を流したところ,電極Ⅰに銅 0.635g が析出した。この間に電極Ⅲ,電極Ⅳ,および電極Ⅴにおいて生じた変化の記述として正しいものを,それぞれの解答群から一つずつ選べ。ただし,気体の体積は標準状態で測った値とする。
1回実力3年s61玉野光なん
1 電極Ⅲにおける変化
① 電極の質量が増加した。 ② 電極の質量が減少した。
③ 気体が発生し,電極の周囲の溶液が酸性になった。
④ 気体が発生し,電極の周囲の溶液がアルカリ性になった。
2 電極Ⅳにおける変化
① 酸素が発生した。 ② 塩素が発生した。
③ 気体は発生せず,電極の周囲の溶液が酸性になった。
④ 気体は発生せず,電極の周囲の溶液がアルカリ性になった。
3 電極Ⅴにおける変化
① 水素 0.056 が発生した。 ② 水素 0.112 が発生した。
③ 水素 0.224 が発生した。 ④ 水素 0.448 が発生した。
⑤ 銀 0.54gが析出した。 ⑥ 銀 1.08gが析出した。
⑦ 銀 2.16gが析出した。 ⑧ 銀 4.32gが析出した。