2026年8月21日金曜日

BIBLIOTHECA 外国

 

シェイクスピア

 これもずっと昔の話しになるが,コスモス同人のN氏からHamletの輪読会に誘われたことがあった。そのときN氏が選んでくださったテキストがArden Shakespeare のUniversity Paperbacks版だった。Hamletはいろんな幽霊がでてきて(いろんな言葉の幽霊が,とかくべきであろう),辟易したものであるが,原文を読むのも,結構面白いと思った。それにこの頃から,翻訳に何が使われているか注意するようになった。卵を破ってでてきた雛鳥といっしょで,最初に目にしたものが親しみやすい。以後,Arden で揃えようと思ったが,結局,Romeo and Juliet とAntony and Cleopatoraを買ったところで,complete worksが欲しくなり,Oxford Shakespeare  が店頭にあったので求めた。今となってはweb版でたいていのものが読めるので,必要ないように思えるが,これはこれで重宝している。少し大きいので,寝ころんで読むときは,枕のかわりぐらいにしかならないが,ちょっと気にかかるところを見ようというときには便利である。

  The  general editor of the Arden Shakespeare  have been W.J.Crag(1899-1906),R.H.Case(1909-1944) and Una Eliis-Fermor(1946-1958) の W.J.Cragこそ,ロンドン留学中の夏目漱石が通ったベイカー街の個人教授のクレイグ先生である。このことは江藤淳さんの「漱石とその時代 第二部」のp.87以降に出てくる。

 あのシャーロックホームズで有名なベーカー街であるから,ホームズパロディに漱石が登場しても,理由のないことではない。

 シェイクスピア別人説というのがある。「月光仮面は誰でしょう」というのとちょっと違うが,「シェイクスピアは誰でしょう」というのだ。ソネットと詩劇の作者を同時代の別の人の作品ではないかというのものだ。これも私にはあまり興味がない。あの瓢箪型をしたシェイクスピアと呼ばれている人でいいではないか。また,最近,シェイクスピアの作と称せられる2つの作品が見つかって,翻訳も出たという。これにも私は興味がない。だいたい中野好夫さんや福田恆存さんが御存知なかったような作品などなくても,シェイクスピアは十分に完結しているのである。

 後年,全作品を読んでみることにチャレンジし,2008年秋からはじめて,2009年秋に結願しております。これは夕凪亭閑話でその都度記しております。



ローマ帝国衰亡史


筑摩書房から中野好夫さんが訳されたものが単行本として出ていたので、全てこれで読むことにした。 

 

 

ニーチェ

因島高校の二年というのは特別な学年であった。というのは、コース別にクラスが編成された。理系と文系。就職(非進学)は文系と同じだったが、進学と就職とと考える者もいて、理系のの中に文系進学希望者も混ざっていた。だから理系でも高3の物理と並行して生物が設けられていた。その理系に入っていたのだが、同じクラスにニーチェを読んでいる生徒が二人もいて、その二人が別々に私に勧めた。今から思えば凄いことだ。高校や大学は有名校がいいと血眼になっている人が多いが、どこへ行こうとその人の能力が変わるわけではない。だからどこでも良いのだ。そうであるが、高校二年の時、そういう生徒が二人もいたというのは、因島高校へ行っていたからであった。別の高校なら別の高校で、別の出会いがあったのであろうが。

それで、私も「世界の名著」のなかの『ニーチェ』を買った。


 小林秀雄さんの「ニイチェ雑感」に,再読してみると,昔読んだニーチェがどこにもいないと書いてある。かように,ニーチェはとらえどころがない。鰻ようなものだ。掴んだと思ってもつるりと逃げてしまう。しかし,あの脂ぎった魅力は捨てがたい。私はといえば,その脂ばっかり喰っているせいか,いつまでたっても血や肉にならない。

 世界の名著の「ニーチェ」を買ったのは1969年の11月29日である。この本は世界の名著の第一回の配本である。初版は昭和41年2月4日で,私が買った本は昭和44年10月15日発行の22版である。 「編集・解説」と「ツァラトゥストラ」の翻訳が手塚富雄さん,「悲劇の誕生」の翻訳が,当時電気通信大学講師の西尾幹二さん,付録の対談は三島由紀夫さんという,まことに豪華な取り合わせである。

 その頃,岩波書店の販売店信山社がReclam文庫を扱っていて,郵送してもらった。〝Also sprach Zarathustra〟が600円,〝DIE GEBURT DER TRAGöDIE AUS DEM GEISTE DER MUSIK〟が300円だった。昭和48年の話し。

 その頃,ニーチェの全集は理想社から出ていて,買いたいなあと思って,在庫を電話して確認したりしたことを思い出します。多分全冊揃ってなかったのか,結局買わなかった。ずっと後になって,これは,ちくま文庫に収録された。

 そのうち,白水社から,3期に分けて本格的な全集が出ることになったので,求めることにした。そして,いつしか月日が流れ,そのころのことが記憶の彼方に去り,今,隣に並んであるこの全集を見ても,Ⅱ期で終わっている。Ⅲ期はどうなったのかしら,と思って,終わりの頃の月報を探しても,白水社のホームページを見ても何も書いていない。それに,古書ネットで捜しても,Ⅲ期のものはない。

 Ⅱ期の別巻が「ニーチェ研究譜」となっているので,終わったのでしょうね,きっと。

 岩波文庫は,氷上英廣訳で「ツァラトゥストラはこう言った」が上下2巻。・・・下巻が手元にないぞ。亡くしたのか,もともと買ってないのか,わからなくなった。上のはうは,いろんなところへ持っていったので,かなり痛んでいる。本はすべて墓場まで持っていけないので,せめてこの岩波文庫を棺桶にいれてもらうようにしたいと思っているので,やはり,下も捜しておかなければ。(その後購入しました。安心して死ねます。)

 秋山英夫訳「悲劇の誕生」。こちらもよい訳だと思う。木場深定訳で「道徳の系譜」と「善悪の彼岸」。手塚さんの訳で「この人を見よ」。以上が岩波文庫。

 その他,西尾幹二訳さんの訳で「アンチクリスト」(潮文庫)。この書の成り立ちについては,白水社版のニーチェ全集に収録されたときに,西尾さん自身によって明らかにされた。何と,世界の名著に入れる予定だったのが途中で中止となったということである。

 阿倍六郎訳「人間的な,あまりに人間的な」(新潮文庫)。このあたりが,乏しい小遣いで買うことのできたもの。

 

コナン・ドイル

 有名なシャーロック・ホームズ物語は短編・長編ともに新潮文庫ですべて読みました。全編に貫く論理レトリックに魅了されない人はあまりいないでしょう。すべてを忘れて読み耽けることができたということは、しあわせな時間をもっていたということでしょうか。

 

アーネスト・ヘミングウェイ

 高校時代にカミュとあわせてスタインベックを出たばかりの大部な新潮世界文学で読んでいたのに、ヘミングウェイは読んだことがなかった。読み始めたのは、ペンギンブックの「老人と海」を買った浪人時代よりあとではないかと思う。その後、短篇集や「武器よさらば」などをやはりペンギンで買って読んだ。特に、「武器よさらば」の冒頭の原文には感心した。

 

 

聖書

 聖書は,世界の名著12にあり,旧約聖書も新訳聖書もほどよく選択され,丁寧に訳されていて読みやすい。聖書には,実にいろいろなものが含まれている。神話,歴史,伝承,民族学,信仰(当たり前だが),語源,オカルト・・・と,まさに豊饒である。

 筑摩書房の文学全集にある「聖書」は文語訳の旧約聖書,新約聖書を,それぞれ関根正雄氏,木下順治氏が編集したものである。

 旧約はユダヤ教の教典だから,ヘブライ語で書かれている。新訳は不思議なことにギリシア語で書かれている。コイネーという方言だと思っていたら,高津春繁著「比較言語学入門」(岩波文庫)のp.50に

「西紀前四世紀後半アッティカ方言にイオーニア方言の要素が加わり,アッティカ方言にのみ特有な形を除いたものに種々の方言に共通な要素を加味した一つの共通語コイネー(Κοινη)なるものが生じて,これがマケドニア帝国の勃興とともにその広大な版図に広がり,ヘレニズム時代に東地中海の一種の共通語として行われるに至った。原始キリスト教会の用語はコイネーにほかならない」

とあって,単純ではない。これでは,方言どころか標準語ではないかと思ってしまう。込み入ってきたので,古典ギリシア語と,新訳聖書のギリシア語は少し違うようだと,書いておきましょう。

  ヘブライ語の参考書は,池田潤著「ヘブライ文字の第一歩」(国際語学社)というのを,1冊だけ持っているのですが,全く進歩しません。文章は読めなくてもいいから,文字だけは,60歳になるまでに読めるようになりたいものだと思っております。この本の15ページにアルファについて説明があります。フェニキア語の牛(アルファ)の頭文字から来ている。祖シナイ文字のアルファは牛の頭の絵です。それを右回りに90°回転されると。フェニキア文字になり,さらに90°回転させるとAになるというものです。ギリシア文字のアルファは牛なのです。

 

Albert Einstein

 20世紀の物理学に大きな影響を与えた,特殊相対性理論,光電効果,ブラウン運動についてのEinsteinの論文は1905年に発表され,2005年がちょうどそれから100年ということで,昨年は様々な催しが開かれ,また多くの本が出版されたことと思うが,そういう流行とは距離をとる小生としては本を買わなければ読みもしないが,そろそろその騒ぎ(というほどでもないか)も収まったようなので,昔買った本などを取りだして,整理してみよう。

 手に入りやすいものとしては,岩波文庫。内山龍雄訳・解説「アインシュタイン 相対性理論」。1905年の特殊相対性理論の原論文の翻訳と詳細な解説。

 次が,矢野健太郎「アインシュタイン」(講談社学術文庫)。矢野健の解法のテクニックというのはある年代の方には懐かしい記憶があることと思うが,その矢野健さんの本だから一読の価値はあろうというものです。これは講談社からかつて出版された人類の知的遺産シリーズの1冊です。このシリーズは伝記,解説,著作の一部が入っているというなかなか便利なシリーズだったが,哲学者の多くの作品は一部しか収録されてないし,他に全訳が出版されているというような事情があったせいだと思うが,多く出回らなかったようで,現在ではなかなか手に入りにくいようです。しかし,そのせいか,そのうちのいくつかが学術文庫に入っていて,求めることが可能です。 原論文の翻訳も8編入っているので,いいと思います。

 以上2著が出る前の,若い頃買ったのが,東海大学出版会から出ている物理学古典論文叢書の4「相対論」。これにはプランクやミンコフスキーの論文の翻訳も入っているので,一読の価値有り。他の巻にも有り。

 さらに,本格的なものであれば,共立出版から出ている,湯川秀樹監修「アインシュタイン選集」(全3巻)が解説も詳しくていいでしょう。

 原論文がweb上にあるのではないかと,調べてみたら,アインシュタインの主な仕事が発表されたAnnalen der Physicという学術雑誌が,昨年増刊号を出し,再掲載しております。Historic Paper として載っているEinsteinの原著論文はpdfで閲覧可能ですので,興味のある方はどうぞ。

  これは概論で,入門書ですが,アインシュタイン,インフェルト著,石原純訳「物理学はいかに創られたか」(岩波新書,上下)。これは歴史的には古く,岩波新書の50,51という番号がついております。旧赤版で,一番最初のデザインの赤版です。翻訳の初版が1939年です。そして今でも,勿論改版され赤いきれいなカバーがかけられて店頭にありますからたいしたものです。

 アインシュタイン著,中村誠太郎,南部陽一郎,市井三郎訳「晩年に想う」(講談社文庫)。これは“Out of My Later Years”という論文・評論・講演集の翻訳である。記事解題として目次に対応して,各文の初出があきらかされてあるので,上述の学術文庫と併せて読むとよい。なお,本書は日本評論社より刊行されていたのものの文庫版である。

アインシュタイン関係の参考書,すなわちアインシュタインの著作でないものもたくさんあります。

矢野健太郎「アインシュタイの不思議な世界」(日本放送出版協会)の105頁には,プラハ(プラーグ)のドイツ大学で,幾何学者のゲオルグ・ピック教授と知り合いになり,ここで一般相対性理論に必要な数学の知識を得る準備ができたことが書かれております。

 

CRYSTAL  Home