2018年4月11日水曜日

和字功過自知録

白滝山  白滝山研究目次


「増補絵抄 和字功過自知録」

増補絵抄 和字功過自知録 (わじかうくわじちろく)
再板 全部 壱冊
此編ハ、大明雲棲蓮池大師(だひみんうんせいれんちたいし)の、現本を訳
して、老若(らうにゃく)男女(なんによ)、いときなきわらべまでも、大道(たひだう)
を行(おこな)ひ至善(しいせん)不正をすすむに捷径の書也、
常に熟読して、信じをこなふ人ハ、災害(わざわひ)をま
ぬがれ、壽福を得るかと、佳かるべからずと、云而
   毘耶窟蔵
和字功過自知録敍わじこうかじちろくじょ
有客懐一編来、出呈之余、且徴序。曰、此書、本袁了凡
功過格、雲樓大師自知録、依其條例、摘其切要、名日
功過自知錄、著以國字譯言者、
欲令闇婦癡童易通
晚而受持信行也。余披閱之、視其立條分事各品功
過、絲善髮惡、舉而不措、戒惡勸善、循
然誘人親切。
乃感歎不輟。因謂功者、積善以成功德也。過者過惡
也其戒惡移善也要在日記功通月較多寡而
所行如何耳過多心輸則恶不必等功多情喜則著

和字功過自知録敍

客あり一編を懐(ふところ)にして来り出して、之を余に呈し、且つ序を徴(もとむ)。曰く、此の書袁了凡の功過格、雲棲大師の自知録に本づいて、其の條例に依り、其の切要を摘む。名づけて功過自知録と日(い)う。著するに国字訳言を以ってするは、闇婦癡童(ちどう)を通暁して受持信行し易からんとせしめんと欲するなり。余之を披閲し、其の條を立て事を分かち各々功過を品し絲善髪悪を挙げて措(お)かず。悪を戒め善を勧め循循然として人を誘(みちび)くこと親切なるを視る。すなわち感嘆軽からず。因って謂(おも)う、功とは善を積みて以って功徳を成すなり。過とは過悪なり。其の悪を戒め善に移るや。要は日に功過を記し、月に多寡を較べて己の行う所如何か審らかにするのみ。過多めを心慚(はずる)ことは則ち悪を為すに忍びず。功多め情を喜ぶことは則ち善為さざること能わず。


己が行う所、日(ひび)に自(み)知って、自(み)よく戒移(かいい)す。皆身を省み心を正すことに由(よ)って発す。誠に善を践(ふ)み道を行わんと欲する者の此れを捨てて何ぞ求めんや。其の言に云う。善を為す者は福を獲、悪を為す者は禍に罹(かか)る。之(これ)天の定理。然るべくなり。曾子曰く、爾(なんじ)より出たる者は爾に反し、孟子の曰く。禍福己より求めざる者無し。則ち善悪は己がこれ出(い)だす。禍福得ることは己に反(かえ)し。則ち自(み)求めてこれを得るに非(あらざる)こと無し。是に由って之を観れば、人の為に害を除き患いを救う者者は己の凶悪を遁れ生を育(そだて)し、殺すことを戒むる者は、福祥を享(う)ける。世の富貴利達を求むる者も亦是の道に由らずば何を以って志を得んや。今や人取りて取るたることを知りて、取ると為すことを知らざるなり。かつ貨を悖(もと)って入る者はまた悖って出るの理を悟らざる。貧吝頑忍唯


貨の財のみの営みて恩恤(おんじゅつ)有ること鮮なし。儻(も)し此の書博く世に行なわることを得て人人受持信修し、孜孜(しし)日に化し、家以って郷に延びて邦国に達せば、則ち廉恥(れんち)の風興って謙譲の道立ち、富む者の足ることを知りて、窮する者生を安んじ、国偸盗無くて民の徳厚きに帰せん。姦邪悪残賊の人と雖(いえども)亦恥有りて且つ格(ただし)からん。嗚呼(ああ)其の功偉然とし大ならずや。余之を嘉慕し、其の述者の姓名を問うに顕(あらわ)に言わず。蓋(けだ)し此れ紀藩世禄達官の士にして今は既に致仕す。其の為人(ひととなり)や遜謙声聞を好まず。資性慈恵。常に財を散じ恩を施して以って人の急を周(すく)う。因って思う、吾が財や限り有りて乏しき者なり。限り無しを以って限り有るを随うは、限り無きに難きのみ。人をして悪を遏(とど)め善を修め禍を避け福に致し、自ら天佑を亨(う)けしむにはしかじ。

         



然ると雖(いえど)も家ごとに至って人ごとに説くべからず。是に於いて此の書を纂述(さんじゅつ)し。之を梓に鏤(ちりば)め以って広く人に施し与えんと欲すと云う。余深く済衆の志を美と美とし、且つ人の美をなすことを喜び、すなわち不敏を顧みず敢えて畀(あた)う辞を裁し之を篇首に冠することなり。


安永龍集乙未秋九月 平安処士 安田棟隆


祐也。雖然、不可家而人説也。於是算述此書、鏤之
梓欲以広

とど(メル)、アツ


和字功過自知録序
         功   善
     心    自知録
         過   悪
此書ハ人に善を勧めて、天の福をうけしめ、悪を戒て過(わざわい)をのがれ
しめんが為に記せり、功の字ハいさほしと訓じて何とても精を
出し、苦労し之にしたしみ、一際きハと見え  るを 
明の袁了凡
といふ人はじめハ
まずしかれども
  の才
のこころへあり
ある時
慈雲寺といふ
寺に遊び
九十一石
子ハ一人


南とうの棲露寺に
て雲谷禅師を訪ふ
事あり。三日三夜
禅門を訪うるの時
雲谷禅師立会

広大無辺の利益功徳乃しるし


善をおこなえば、広大むへんの利益功徳のしるし、あらわれるものなり。この書衆生あまねく信仰せば、家とみ国さかえて天下泰平ならんこと疑なし。現世の利益かくの如し、来世の果報あに空しからんや

自知録上巻  古抗雲棲寺 袾宏 輯
 善門
  忠孝類
一父母につかへうやまひて、よく養ふ一日一善
 ◯父母のただしき、をしへをまもりて、そむかず一事一善
 ◯父母のとふらひ、分限のかぎりハ志をつくす百銭を一善
 ◯父母をいさめ、大道をすゝめ、みちびく一事十善
 ◯父母に仏法をすゝめみちびく一事二十善
一継父母 祖父母 舅姑ハ実父母の善と一倍強くいふ
一君につかえ、忠をつくし勵る一日一善


 ◯善道をすゝめ、一人を利益す一善◯一方を利益す十善
 ◯天下を利益す五十善◯天下後世を利益す百善
一国王の御掟をまもりそむか図一事一善
 ◯凡一切の事に真実にして欺く事なきハ一日一善
一師匠又は年長じたる人につかへうやまふ一日一善
 ◯師のよきをしへを、まもりてそむかず一言を一善


****



寛政12年は1800年。伝六20歳。