2025年7月12日土曜日

番外編6-10

6 源氏物語

 源氏物語は原文はもちろん現代語訳でも難しい。俗に「須磨源氏」と言われるように「須磨」の巻きまで済まないのか、そのあたりまででやめる人が大部分だという意味だろう。

7 春の雪

 三島由紀夫でもし1冊を選ぶとすると『春の雪』である。もちろん4巻本の1冊だから、これ1冊で話は終わるわけではないが・・・、

 三島さんのライフワークということで、全体のタイトルは『豊饒の海』という。月の地図上の名前である。月だからもちろん海などない。窪地のようなところを海と呼んだ。多くのミネラルでもあるかも知れないという期待を込めたのかも知れないが、実際には不毛の地であろう。そういう意味をかけたタイトルである。これはまた生涯の全作品を意味していると思っても良い。実に見事なきらびやかな作品群は豊饒というにふさわしい。しかし、覚めた目で見ると所詮文字で書いたあだばなであるという認識を忘れてはいないぞ、という自己批評に他ならない。

 文芸雑誌「新潮」に連載されていて、1巻「春の雪」、2巻「奔馬」が全巻の途中ながら新潮社から単行本として刊行された。昭和44年の1月に発売されている。高校2年から3年である。新聞で書評を見てすぐに注文した。続いて「奔馬」も同様である。『潮騒』を読んだのが高校1年か。つまらないと思った。1年ほどして新著日本文学という1作家1巻という日本文学全集が出た。図書館にあった。すごいなと思ってファンになった。そのあとの『春の雪』であったから、たちまち陶酔・・・。高校2年から3年。

 そして、翌年4月から私は広島の予備校の寮暮らし。寮の隣に銭湯があった。3時ごろ開く。暇な時は開店と同時に行く。11月25日銭湯のテレビで三島事件のことを知った。憧れの作家が自殺したからと言っても、こちらはそれに同行する義理もロマンもない。ただ、こちらの世界を生きていくしかないだけであった。雑誌や週刊誌の特集があれば買っておくように弟に指示しただけである。



陰騭録


命(めい)は命(いのち)である。命(めい)について述べるのが道学である。

 天命とは先天的に扶余されたものである。

 後天的に変えられるから運命となる。

  それを否定するのが非運命すなわち宿命ということである。

 宿命論にとどまるのではなく、積善によって変えられる、すなわち「運命」を自ら切り開くことを説いたのが袁了凡の「陰騭録」である。

           西澤嘉朗著『陰騭録の研究』(八雲書店)の安岡正篤の序文より


袁了凡「陰騭録」 石川梅次郎注解 明徳出版、中が奥古典新書

西澤嘉朗著、安岡正篤序、『陰騭録の研究』、八雲書店

の安岡正篤、『立命の書「陰騭録」を読む』、竹井出版