尾道市立因島図書館では毎月第四木曜日、午前10時15分から12時まで、尾道学古文書担当の半田堅二さんを講師に古文書講座・古文書で知る因島を開いている(写真)。
江戸時代に書かれたものを近世文書と呼ぶ。近世文書には大きく分けて武家文書と村方文書がある。村方文書は庄屋文書とも呼ばれ、行政文書を書き写しては次に廻すというような時代だったので、その控えが全国に多数残っている。
因島では割庄屋を長く勤めた竹之内宮地家の文書が残っていて、毎回解読・解説されている。ある地方を代表する庄屋を広島藩では割庄屋というが、福山藩では大庄屋といった。
村上水軍時代の第二家老稲井家から第四家老の宮地家に養子に行った子孫が、江戸時代に大土生宮地家となり土生村の庄屋を勤めた。その分家が竹之内宮地家で三庄村で割庄屋となった。稲井家は新田義貞の弟脇屋義助の子孫で新田党である。宮地氏は吉和の鳴滝城の元城主であった。
このように古文書そのものにも長い長い歴史が込められているが、内容も頗る興味深く、シーボルト事件の発端となった台風の被害を因島の船も受けたとか、伊能忠敬が日本地図作成のために来島したとき、多数の船や人が動員され、重井村と三庄村に宿泊したことなども出てきた。
また、2月の講座では因島重井町の白滝山五百羅漢の開祖柏原伝六の思想を伝える観音和讃の写本の一部が、変体仮名の学習用に紹介された。現行のひらがな以外で、ひらがなを表現した字が変体仮名である。向島の古名歌島を変体仮名で宇多之島などと表記してあっても音を表しているに過ぎず、漢字の意味を考えると誤解となることなどが解説された。