ほど子をうめども其のおやの骨肉
少しにてもへるといふ事なし亦々
森羅万像くちすててもその
少しも土が不向 事なしこれ
らを見てとくと取得が さるが
これを名付て福聚海無量と
いうにや是ハ佛語なり誠にこれ
までは予が愚なるかんげんをとつて
いろ〻とかきさだしたる事ばかり
何にかさし き御かみ様の御恩を
とくとくとかんがへ見るにだれぞ上天なり
然る時ハ御上様ハ天なり。天ハ常に
そのいへたまわず かるが故に人身に
のりて是をとつてそのをなしく導
引たまふものなり 左あるによつて
天ものいわずして人をとつていたし
むるにはいふなり 左有るによつて
御上様ハすなわち天なり 御上
おふせをそむくことのハ天に
玉ふなり 順と逆とになるゆへにばち 給うなり 順と逆とになるゆえに 罰(ばち)
がゆきあたるなり これにも天道様が
ばちをあてなさるものにあらず 我
々が逆にものをなするゆへに 順の
天に己(おのれ)がゆきあたるなり たとへていわば 天に己がゆき当たるなり 例えて言わば
家のうちにハはしら有 これをはしらと 家の内には柱あり。これを柱と
しらずしてやミ夜にゆきあたりて 知らずして闇夜に行き当たりて
はしらが己をいためたかと思ふよふな 柱が己を痛めたかと思う様な
ものなり 何事も順逆の道理有 ものなり。何事も順逆の道理有り
と聞く 予ハむろん むがく同よふのため
ゆへ書物ハ見へず 他の書物をきく
ばかりなり 此の天文地理といふ事
をきいてかんがへ見るに 天を開かね
ば天文の奥ぎわかりがたきものと
愚に按じ此天文地理とかいて
あるを予がよむにハ 天の文をとつ
て地に理をさだむと思へこれに
よつて天道ハすなハち御上様なり
しかりといへども我性ハ我が目に見る
事なりがたくゆへに私欲のねん
有つて天理にそむく これによつて
聖賢世に出玉へて天の文をも
つて世に理を定め給ふ仏にてハ宗を
定めみな世をおさめたまふ御事なり
扨又父母の御恩をしりたきもの
なり 人々天を父にたとへ地を母に
たとへ左有るによつて御上様の御おん