2015年2月27日金曜日

福井県美浜町・若狭町 三方五湖


2014.10.29.




潟に關する聯想
柳田國男
△若越の海岸と三方湖 越前の海岸は山脈が海に迫つて居つて、自から別樣の風景を示して居りますが、再び敦賀に參りますと、又非常に深い海灣が羅列して居るのです。殊に若狹に入りますと、岬と灣とは送迎に遑がない位で、然かも灣口は風向に僅かな差違のある事と、附近に澤山の砂を作る川のない事とによつて、海から鎖されることを免れて居るのであります。就中三方湖の如きは、古い時代に同一の手順を以て作られた潟であつて、郡の名が示す如く此潟が餘程著しい地方の特色をなして居るのであります。三方とは稱しまするが、實は潟が四つあるのです。唯其一は小さくて少しかけ離れて居りまするが、他の三つは連珠のやうに、南北に駢列して、海岸で幅三間計の川で以て海に續いて居るのであります。以前は此三湖の水が、各※[#二の字点、1-2-22]獨立して居りましたが、有名な行方久兵衞氏の設計で、中の湖の水を下の久々子湖に落した爲に澤山な新田を作ることが出來たのであります。近年又水利組合の事業として、水道を開き、さうして更に行方氏の業を完美しようとして居ります。

 此潟は四圍が稍※[#二の字点、1-2-22]高い山であるが爲め、石川縣の潟とは餘程風景を異にして居りまするが、暖かで種々の果樹や、櫨や、油桐などの生々繁茂せる點は、加賀の三湖と同じであります。(青空文庫)

福井県の道