2019年2月26日火曜日

夕凪亭閑話 2008年2月

    
2008年2月6日。水曜日。晴れ。 旧暦12.30 ひのえ ね 一白 大安
 少しご無沙汰しておりました。元気です。寒い日もありました。立春も過ぎ,日に日に光が明るくなっていくようで,楽しくなります。とはいえ,夕食後,炬燵に入るとすぐにうとうとしてしまいます。人並みに年をとっていると感じます。
 
2008年2月7日。木曜日。晴れ。 旧暦1.1 ひのと うし 二黒 先勝 旧正月
 旧暦の1月1日ですから,旧正月ですね。昼間,ふと空を見上げると,真っ白な雲と,混ざり気のない見事な青空が輝いていました。もう少ししたら降砂で,屋根も車も洗濯物も,もちろん空もかすんできますから,今日の青空は冬と春の間にみられるつかの間の明澄の世界だったのでしょう。
 
2008年2月8日。金曜日。晴れ。 旧暦1.2 つちのえ とら 三碧 友引
 春めいてきているのに,またまた寒波到来のようです。
 「リサ・ランドール 異次元は存在する」(NHK出版)はアメリカの物理学者ランドール博士と宇宙飛行士の若田光一さんの対談を本にしもので,大変おもしろい。ランドール・サンドラムモデルというのは,われわれの住む4次元時空よりも,ひとつ多い5次元宇宙のモデルだ。1次元が余剰次元といわれるもので,長さが無限で,曲がっているというもの。その次元がシャワーカーテンのようなブレーンになっていて,その表面にある水滴がわれわれの世界という新しい(といっても1999年に提唱されたものだが)モデルだ。重力はそのブレーンとブレーンを行き来できる。そういう話である。
 
2008年2月9日。土曜日。雨時々晴れ。 旧暦1.3 つちのと う 四緑 先負
 朝から寒く霙混じりの雨が降っておりました。でも雨がやむと,さすがに春の光で,この寒波が嘘のようです。
 今日からまたまた連休が始まります。気の早い人たちは,春の行楽へと足を向けるのでしょうが,当方はお籠もりを決め込んでおります。高知などに春を見に行くのもいいのでしょうが,ガソリン代も高いし・・・・。
 
2008年2月10日。日曜日。晴れ。 旧暦1.4 かのえ たつ 五黄 仏滅
 早春の日射しに溢れた日でした。猫が姦しく24時間騒ぎっぱなしです。
 DVDで「サムソンとデリラ」を見る。「十戒」のセシル・B・デミル監督作品。ヘディ・ラマールがデリラ。その姉セマダールがアンジェラ・ランズベリー,そしてサムソンがヴィクター・マチュア。ライオンとの格闘シーンは勿論着ぐるみだろうがよく出来ている。妖艶なデリラは悪女というよりは情熱の女。1949年の作品。
 
2008年2月11日。月曜日。晴れ。 旧暦1.5 かのと み 六白 大安 建国記念の日
 建国記念日ということです。いつのことか,ということについては昨年書いたので今年は書きません。
 昨日よりも暖かく,ほんとうに気持ちのよい日でございました。
 Lisa Randall 博士の"Warped  Passages "には,巻末にGlossary(用語集)が付いています。そこのbrane には次のように書かれています。"A membrane-like object in higher-dimensional space that can carry energy and  confine particles and forces. " ですから「膜のようなもの」というのややもの足らないような感じがしますが,それでいいのですね。  
 
2008年2月12日。火曜日。晴れ。 旧暦1.6 みずのえ うま 七赤 赤口 初午
 ちょっと冷たかったが春一番のような風でした。
 ミチオ・カク著,斉藤隆央訳「パラレルワールド」(NHK出版)を読む。この本の第Ⅰ部宇宙,第Ⅱ部マルチバース,第Ⅲ部超空間への脱出 という構成を見ればわかるよううに,この本は宇宙論と最近の超ひも理論などを述べて最後は人類の未来について語られた,壮大な科学啓蒙書である。第Ⅰ部Ⅱ部のわかりやすい解説も見事であるが,特に第Ⅲ部が素晴らしい。第Ⅱ部で地球で生命体が誕生し進化したのが,宇宙の中でもいかに多くの偶然に支えられているかということが述べられる。例えば月との関係。月がほんの少し大きかっても小さかっても地軸が傾いて気候が安定しなくなる。惑星の軌道が円に近くて惑星間の衝突が起こりにくくなっているし,木星の重力が小惑星を太陽系外へ放り出しているし・・・と,いずれもがちょうどよいところにあるので,地球が生命を誕生させ進化させることができたのだ。というようなことを考えてみると人類という存在が全宇宙で考えてもかけがえのないものだということがわかる。一方,膨張宇宙はやがて収縮に転じ,宇宙そのものがなくなるかもしれない。さて,どうやって脱出するかというのが,第Ⅲ部での主題となる。その方法が列挙されるのだが,ロボットに情報をもって脱出させ,再構成させるというアイデアがおもしろい。情報でなくて,冷凍保存された卵子と精子をロボットがもって脱出し,環境のよいところでヒトを誕生させるのであれば,ワームホールを抜けるというはるか未来でなくて,宇宙ロケットの時代でも可能ではないかと思われる。
 
2008年2月13日。水曜日。晴れ。 旧暦1.7 みずのと ひつじ 八白 先勝
 もう二月も折り返し点で,春はどんどんとやってきているのだが,昼間は気温が上がらず小雪がちらついて寒かった。日が長くなり午後六時でも明るくなったのがうれしい。
 吉川洋「ケインズ-時代と経済学」(ちくま新書)読む。ケインズの生きた時代に即して,そして主著の簡単な解説と共にケインズが果たした役割が述べられている。ケインズにもまた経済学にも疎い閑話子にとっては,まことによくできた入門書であった。
 ケインズは名門パブリックスクールのイートン校で秀才であり,特に数学においてその能力を発揮したが,ケンブリッジ大学キングズ・カレッジにおいてはどちらかというと挫折して数学者の方面に進んでいないが,知的な交友をもったようである。そういう面から見ると,経済学者以外のケインズの素顔も,この本ではほとんど出てこなかったが,興味深く思われる。
 
 
2008年2月14日。木曜日。晴れ。 旧暦1.8 きのえ さる 九紫 友引
 朝,外の水道がほんのわずかだが凍っていたから,この冬一番の冷え込みだったのだと思います。
 「孔子世家 第十七 史記巻四十七」(新釈漢文大系)
 長い孔子の伝記がやっと終わった。前半は孔子が魯を出て帰るまでの諸国での様子が記される。帰国後晩年の素描に見事なところがある。多くの論語に出てくる話であるが教育者孔子の姿が見事に描かれている。
 
2008年2月15日。金曜日。晴れ。 旧暦1.9 きのと とり 一白 先負
 当たり前といえば当たり前,奇妙といえば奇妙なのは,昨日よりも厚い氷が張っていたことである。雪は降っていないが,この冬一番の寒さだろうか。当たり前というのは,これまで生きてきて二月が最も寒い月であったから,まだ二月なのだから,寒くて当たり前である。奇妙というのは,光の明るさも日没の時間も,草木の色も,至るところに春が来ているのに,気温だけが伴わないのが奇妙である。
 和田秀樹「大人のための勉強法」(PHP新書)は,いろいろな勉強法が書かれてあって楽しい本である。「できる人のノウハウを信じてまねしたところで,ほとんどの場合は失うものはない」(p.26)ということである。真似しなくても,なるほどというところはたくさんある。とともに,この本のおもしろいところは,方法論もさることながら,多くの分野で活躍されている著者の考え方がいたるところに顔を出しており,いろいろと教えられる点である。老化防止のためという軽い気持ちで手にとった本であったが,それ以上の本であった。
 
2008年2月16日。土曜日。晴れ。 旧暦1.10 ひのえ いぬ 二黒 仏滅
 やはり,寒いですね。
 「陳渉世家 第十八 史記巻四十八」(新釈漢文大系)
 「天下激動の発端は陳渉の歩兵に始まった」と言われる,陳渉の世家へ入る。
 「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」というのは,昔-といっても,恐竜が住んでいた頃ほど大昔ではないが-,「草枕」に出てきて感心した言葉です。そして,二世元年というのは秦の二世,すなわち始皇帝没後のことであるが,辺境の守備の賦役にかり出され,大雨で道路が不通で間に合わなかったら死罪になるという会話が出てくる。司馬遼太郎さんの「項羽と劉邦」にも似たような話があったと思い出した。あれは始皇帝の廟の賦役だったかな・・・?。
 
2008年2月17日。日曜日。晴れ。 旧暦1.11 ひのと い 三碧 大安 さんりんぼう
 朝も,日中も寒かったですね。もう春だと思ったのが甘かった。まだまだ二月なのだ。小雪がちらついておりました。でも,幸い積もってはいません。 
 亀山郁夫「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」(光文社新書)は,難解なカラマーゾフの兄弟のもつ様々な背景を見事に解き明かして,書かれなかった続編について,著者の現在の到達点を示されたものである。人物にしても地名にしても,あるいはドストエフスキーが生きた自体(帝政末期)につても,ああそうだったのか,と教えられるところの多い本である。
 
2008年2月18日。月曜日。晴れ。 旧暦1.12 つちのえ ね 四緑 赤口
 ますます寒くなります。
 昨夜放送されたNHKアーカイブスの,海外の日本「ブラジルに生きる」1968年(昭和43年)66日放送と ドキュメンタリー'90「ニッポン出稼ぎ ~ブラジル日系人それぞれの選択~」1990年(平成2年)1121日放送 を見た。その取材力は凄い。さすがNHKだと思う。放送された時から40年,18年が経っている訳だ。それぞれが,それぞれの事情で変貌しているだろう。想像するのみ。
 
2008年2月19日。火曜日。曇り。 旧暦1.13 つちのと うし 五黄 先勝 雨水
 満月に近い月が寒空に浮いております。
 「陳渉世家 第十八 史記巻四十八」(新釈漢文大系)
 陳渉世家を終わる。陳渉は討秦の魁となるも王となること6ヶ月その目的を達することなく没する。「その臣に彼の卑賤の出身と学徳の浅劣を補佐し補足するに足る智勇の将相が無かったために,最終目的を達成し得なかった」(賈誼・過秦論)(p.916)。ということで,一抹の寂しさが残る。
 
2008年2月20日。水曜日。晴れ。 旧暦1.14 かのえ とら 六白 友引 
 黄砂だったのでしょうか。でも寒い。綺麗な満月です。
 「外戚世家 第十九 史記巻四十九」(新釈漢文大系)
 「古より命を受けたる帝王,及び体を継ぎ文を守れるの君は,独り内徳の茂んなるのみにあらざるなり。蓋しまた外戚の助けあり」ということで外戚についての話である。そして「秦より以前は尚しくして略せり」ということで,まず呂后。高祖の晩年には高祖の寵愛が戚夫人に移る。高祖崩御後は戚氏一族を皆殺しにし,太子の如意も殺すとともに,高祖の寵愛を受けていたものも殺すという極悪人ぶりが描かれる。
 
2008年2月21日。木曜日。晴れ。 旧暦1.15 かのと う 七赤 先負
 今日も黄砂。寒波も去り,いよいよ春ですね。ぽかぽか陽気というわけにはいきませんが。
 今日の朝刊は,パラチオンという怖い薬品の名称を久々に思い出せてくれました。子どもの頃,田圃に散布されていましたね。確かホリドールという名前だったと思います。紙の赤旗を立ててあって,近寄ってはならないと,小学校で注意を受けました。下流の小川に入ってもいけなかったのです。何年くらい続いたのでしょうか。これで田圃の生態系が様変わりしたと思います。カエル,ドジョウ,フナ,ゲンゴロウ,ミズスマシ,ミズカマキリ,ホタルなど,今では図鑑でしか見ることのできない水中生物がいなくなりました。ヒルや蛇が減ったのはいいことではあったのですが・・・。
 「外戚世家 第十九 史記巻四十九」(新釈漢文大系)
 呂后のような存在を許すと,王室にとっても,国にとっても大きな損失になる。周辺もしっかりとガードしなければならないし,本人自身の自覚も必用であろう。孝景帝の子孝武帝の寵愛を受けた衛子夫が皇后になると,その子や姉の子等ら多くの者が軍功を立てて,貢献するが,呂后のようにはならなかった。これとて,一歩間違えば同じ轍を踏んでいたことと思われる。
 
2008年2月22日。金曜日。晴れ。 旧暦1.16 みずのえ たつ 八白 仏滅
 気温もあがり,いよいよ春ですね。いけない。これでは,まるで浦島太郎の日記ではないか。それでは浦島太郎の日記を読んだことがあるのか,と問われるかも知れない。答えは「ない」である。こういうのは読まなくてもわからなくてはいけない。 
 「外戚世家 第十九 史記巻四十九」(新釈漢文大系)
 巻末に褚先生曰く,として,褚少孫の補記がある。面白い逸話もあるが,事実と異なるかもしれないので,ここには記さない。
 これで外戚世家を終わる。
 
2008年2月23日。土曜日。晴れ時々雪。 旧暦1.17 みずのと み 九紫 大安
 早春の大安ということもあって,結婚式場も繁盛したのではないかと,想像する。春を待ちきれない人々で,街も高速道路も,いつもよりも人が多かったように思います。しかし,春の嵐が吹き荒れ,夕方から雪になりました。
 「楚元王世家 第二十 史記巻五十」(新釈漢文大系)
 高祖の弟である楚の元王,高祖の弟である趙王の話。高祖の兄嫁は,高祖が貧しかった頃食事をしに立ち寄っても,親切にもてなさなかったので,皇帝になっても長兄・伯の子は諸王に封じなかったという話がある。
 
 
2008年2月24日。日曜日。晴れ時々雪。 旧暦1.18 きのえ うま 一白 赤口
 朝,外の水道の蛇口が凍って動かなかったから,この冬一番の寒さだったと思います。夕方の風の,身を切るような冷たさも,冬のしつこい抵抗を見る思いがします。
  DVDで「緑園の天使National Velvet を見る。馬好きの少女ベルベットが12歳のエリザベス・テーラー。馬に詳しいが,ややぐれた放浪少年マイがミッキー・ルーニー。ベルベットの母ブラウン夫人がアン・リヴィア三人三様の渋い演技が光る。特に夢見る少女を演じるエリザベス・テーラーの名演技には脱帽する。物語もユニークで,イギリスの美しい自然の中で奇跡のような話が展開していく。
 
 
2008年2月25日。月曜日。晴れ時々雪。 旧暦1.19  きのと ひつじ 二黒 先勝
 朝夕がすっかり明るくなって,春になったようです。しかし,気温は低い。水仙が少しずつ咲き始めました。
 「荊燕世家 第二十一  史記巻五十一」(新釈漢文大系)
 荊王劉賈と燕王劉沢の話である。ともに劉姓であるのは,偶然ではない。漢の六年,「高祖の子は幼少であり,兄弟が少なく,しかもいずれも賢明でなかった。そこで高祖は同姓の者を王にして各地に封じて,鎮撫しようとした」という時代風潮の中で生じた話である。燕王劉沢のほうは,権謀により王となるのだが,その様子は生き生きと描かれ司馬遷の最も得意とするところか,筆が冴える。高祖外伝とも称すべきや。
 
2008年2月26日。火曜日。雨。 旧暦1.20 ひのえ さる 三碧 友引
 春の雨にはほど遠く,冬の雨でした。でもこれを機に暖かくなるのではないでしょうか。 
 「斉悼恵王世家 第二十二  史記巻五十二」(新釈漢文大系)
 前巻と同様に,高祖亡き後の混乱の様を描く。斉悼恵王すなわち斉王の劉肥は長男で庶子であり,孝景帝の兄であった。この悼恵王が呂氏に斉の領地の一部を与えたことから呂氏権勢が始まる。  
 
2008年2月28日。木曜日。晴れ。 旧暦1.22 つちのえ いぬ 五黄 仏滅
 昨夜は,美輪明宏さんの福山公演を観に行ってきました。黒蜥蜴のときもそうですが,あの体力はどこからくるのでしょうか。敬服致します。 
 「斉悼恵王世家 第二十二  史記巻五十二」(新釈漢文大系)
 太史公曰くを,久しぶりに引用しておこう。「子弟少なく,秦が尺土の封無かりしに激するを以ての故に,大いに同姓を封じ,以て万民の心を鎮めしなり。後に及びて分裂するは,固より其の理なり」