2015年11月23日月曜日

3 物質の三態

目次                    
 
3-1 三態の変化
●●● 実験 液体窒素 ●●● (教師実験)
目的 液体窒素を用いて,-196℃の世界を体験するとともに,多くの物質は温度を下げると固体になるということをりかいする。
準備 液体窒素,エタノール,水銀,酸素,ハンダ,草花など。 
観察
                          
                                  
  物質は温度や圧力によって固体,液体,気体のいづれかの状態をとる。これを物質の三態という。
 
  三態の変化というのはマクロ的には状態変化であるがミクロ的には分子の集合状態の変化に他ならない。
 
●●● 実験 昇華 ●●●
目的 昇華という現象を理解する。
準備 パラジクロロベンゼン,ビーカー100mL,丸底フラスコ100nL、 三脚,金網,マッチ
方法
1. ビーカーにパラジクロロベンゼンを少量入れ,水道水を入れた丸底フラスコを上からのせる。
2. 1.のビーカーをおだやかに加熱し変化を観察する。



  

  したがって,物質の密度は,一般に固体,液体,気体の順に小さくなっている。

 融解熱……結晶がすべて融解するのに必要な熱エネルギー。




                           
                         
問い1  0 ℃の氷10g を融解するのには,何cal の熱量が必要か。
 
 
3-2 熱運動
 
  原子・分子の熱運動
 原子や分子はそのときの温度に応じたエネルギーをもって絶えず激しく運動している。これを熱運動という。
 熱運動の例としてはブラウン運動,拡散,浸透などがある。
 
 ブラウン運動………イギリスの植物学者ブラウンが顕微鏡で花粉を調べている         ときに発見。
          花粉の細胞から出た微粒子に水があたって微粒子が動き回         っているのが観察された。
          この原因となる水分子の運動が熱運動である。
 
  物質の三態と熱運動
 
  気体の運動
   分子は器壁と衝突しながら,直線運動をしている。
  液体の運動
   気体のように自由な運動はできないが分子の移動はおこる。
  固体の状態
   規則正しく密に配列している。これを結晶という。
 
  温度と熱運動
 温度……熱運動の激しさを表す目安である。
  熱運動がないときを0とする。これを絶対温度という。単位K(ケルビン)   T=273.15 + t
3-3 固体の構成
 
 
固体   結晶     イオン結晶
            共有結晶
            分子結晶
            金属
    
     無定形固体……ガラス,プラスチック
      特定の融点をもたない
 
 
固体の特性
 
 
  水和水~特定のイオンまたは分子と顕著な相互作用をもつ水分子。
 
   結晶水~①配位水……金属イオンに配位し,錯イオンを作っている水。
       ②陰イオン水……水素結合で陰イオンと結合し,脱水しにくい。       
                ③格子水……配位せず結晶格子の空所を満たす。
 
 
  風解
   大気中の水蒸気の分圧が,その物質の飽和水蒸気圧より低ければ,結晶中の水分が蒸発する。
 
  潮解
   その固体の飽和水溶液の蒸気圧が,それと接触する大気の水蒸気の分圧よ  りも小さい場合におこる。
 
 
  結晶の比較
 
 結晶
 結合
 物質
融点
水への溶解
かたさ
電気
イオン結晶
 
イオン結合
 
NaCl
CaO
801
2572
溶ける
溶ける
かたくて
もろい
不通
不通
共有結晶
 
共有結合
 
ダイヤモンド
石英SiO
3600
1550
溶けない
溶けない
きわめて
かたい
不通
不通
金属の結晶
 
金属結合
 
Al
Fe
660
1540
溶けない
溶けない
展性・延
性に富む
通す
通す
分子結晶
 
水素結合
 
CH3OH
  0
-98
溶ける
やわら
かい
 不通
不通
ファンデルワールス
結合
 
 CH4
O2
 
-18
-21
 
溶けにくい
溶けにくい
 
やわら
かい
 
 不通
 不通
 
 
                                
 
 
 
 
問い2 ある結晶について調べたところ,融点が100 ℃以下であり,電気を伝えにくく,水にも溶けないことがわかった。この結晶は,次のいずれに分類されるか。
 
① イオン結晶  ② 共有結晶  ③ 金属の結晶  ④ 分子結晶
  
3-4 液体
  蒸発
  蒸発
  蒸発熱
 
  凝縮
 
      表     物質の沸点と蒸発熱
 ・・・
物質
・ N2 ・ O2 ・CH4 ・NH3 ・C 2H5OH ・ H2O
・沸点(℃)
 ・-196・-183・-161・ -33・ 78  ・ 100
蒸発熱kcal/mol
 
1.33・1.63・1.96・5.59・9.23  ・ 9.72・
 
 
問い4 酸素はメタノールと分子量が同じであるが,蒸発熱が小さいのはなぜか。
 
 
  飽和蒸気圧
 
  蒸気圧曲線
 
  沸騰
 
 
 
 
 
 
 
 
問い4 ジエチルエーテルの沸点を図から求めよ。
 
 
問い5 大気圧が600mmHg を示す高い山では,水の沸点は何℃になるか。
 
 
問い6 水,エタノール,ジエチルエーテルを30℃で沸騰させるにはそれぞれ外圧をいくらにすればよいか。
 2 次の問いに答えよ。
                気体定数R=0.082atm・ /mol・K
 下の図は,水,エタノール,およびショ糖水溶液のそれぞれの飽和水蒸気圧を 温度に対して目もったものであり,その曲線は蒸気圧曲線と呼ばれている。この図 を用いて問いに答えよ。
  水とショ糖水溶液の蒸気圧曲線はa,b,cのうちどれか。
  圧力が500mmHg のもとで水は何℃で沸騰するか。
  右図に示したようにエタノールC2 H5 OH 0.046g を注射器に吸い取りその口 に密栓をした。その後温度60℃のもとで注射器のピストンをゆっくり引き出したと ころ,注射器内の容積が何cm3 になったときエタノールはすべて気化するか。
 
3-5 気体
 
  気体の分子運動
 
 拡散
 
 気体分子の運動の速さに比べて拡散の速さは,はるかに遅い。
 
 
 気体の分子運動
 
  ① すべて分子が同じ速さで運動しているのでない。したがって,一定温度   での速さというのは平均の速さのことである。
  ② 気体分子の平均の速さは温度が高いほど,また,分子量が小さいほど大   きい。
 
 
  気体の圧力
 気体は高速で運動しており,気体を閉じ込めた容器の壁にたえず衝突している。この力が気体の圧力である。気体の圧力は単位時間あたりに,単位面積当たりに衝突する分子の数に比例する。
 
 
 トリチェリーの実験
 
 トリチェリーの真空 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
問い7 190mmHg は何atm か。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  実験   ベンゼンの結晶                     
 目  的  ベンゼンの結晶を見せる。回覧中に一部が融けてくる。固体が沈んでいる。               準  備                            
 器 具 サンプルビン                         
 材 料 ベンゼン(冷凍庫で冷やしておく)               
                                    
操  作  
1 サンプルビンにベンゼンを9割り取り,冷凍庫で固まらせておく。
2 生徒に見せる。     
3 回覧中に一部が融けてくる。
4 水・氷の二成分系との違いを考えさせる。
1-3 物質の分類
 
 物質について学習する場合,これを共通性質にしたがって分類しておくと,きわめて都合がよい。物質を分類するにあたっては,いろいろな立場からおこなうことができる。
 
 
◎ 状態による分類。
 
  常圧(1気圧付近)で20℃の室温において,次の物質が,固体・液体・気体のどの 状態にあるか考えてみよう。
 
 
 塩化ナトリウム(      ) ブドウ糖 (       )
 
 水銀     (      ) アンモニア(       )
 
 水素     (      ) アルコール(       )
 
 
 
 固体・液体・気体の3つの状態を三態という。三態による分類にはどのような不都合があるか。    
 
◎ 電導性による分類
 
 固体や液体の状態で電気をよく通す物質と通さない物質がある。また水に溶かしたとき電気をよく通す物質もある。
 
 次の物質はどのような性質を示すだろうか。
 
 
塩化ナトリウム
水銀
 
 
3  物質の三態
 
3-1 次の各現象のうち,三態間の変化に相当するものを選べ。また,その変化を何というか記せ。
  寒い夜,水道管が破裂した。
  塩化ナトリウムに水を入れてかきまぜると溶けた。
  タンスの中に入れていたナフタレンの固体がなくなっていた。
  セメントに砂や水などを混ぜて,型に流し込んだところ固まった。
  湯のみ茶わんのお湯の上からさかんに湯気がでている。
  金魚を飼っている水槽の水が夏には,はやく少なくなる。
 
 
3-2 ( )内を埋めよ。
 固体は,粒子が一定の位置に配列し,全体として一定の( ア )と( イ )を保っているが,粒子はわずかに( ウ )している。液体では,粒子が相互に( エ )を変えて( オ )しているが,粒子は互いに引き合っているので,全体として一定の( カ )を保っている。
 一定の物質が有するエネルギーは,その状態によって,( キ )がエネルギーの最も高い状態で,( ク )の状態が最も低い。したがって,外部から熱を加えると融解や( ケ )がおこり,逆に熱を奪うと( コ )や( サ )がおこる。
 
 
3-3 ( )内を埋めよ。
 液体を構成している分子が分子相互の( ア )に打ち勝って( イ )から飛び出して気体になることを( ウ )という。この(ウ)に要する熱エネルギーを(ウ)熱または気化熱といい,水の場合は9.72kcal/molである。これは水の沸点における値であるから,100℃の水( エ )gを( オ )℃の水蒸気にするには,9.72kcalの熱エネルギーを( カ )必要がある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3-4 温度が0℃以上にならないような寒い地方でも,つくった雪だるまがだ んだん小さくなっていくのはどういうわけか。
 
 
3-5 固体,液体,気体の各状態について,次の各値の大きいものから順にならべよ。
  固体,液体,気体を構成する各粒子のもつエネルギー。
  固体,液体,気体を構成する各粒子間の距離。
  固体,液体,気体を構成する各粒子間の引力。
 
 
3-6 下の図は,純粋な水の固体,液体,気体間の状態変化を温度と蒸気圧によって表したものである。この図をみて以下の各問いに答えよ。
  図中のA~Cのそれぞれの領域で,水               
 は次のうちのどの状態で存在しているか。              
   分子間相互の距離は小さいが,分子               
  は自由に移動できる。                      
   分子間相互の距離は小さく,分子は               
  自由に移動できない。                      
   分子間相互の距離は大きく,分子は               
  自由に移動できる。                       
  圧力が一定で温度を(Ⅰ)あ→い,(Ⅱ)               
 う→えにそれぞれ変化させたとき,およ               
 び,温度が一定で圧力を(Ⅲ)お→かに変化させたときにおこる状態変化を,そ れぞれ何とよぶか。次の中から正しい答えの組合せを選び,番号で答えよ。
                                   
    (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)   (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)   (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) 
                                   
  ① 昇華 凝縮 融解 ③ 凝固 沸騰 気化 ⑤ 凝縮 融解 昇華 
                                   
  ② 気化 凝固 融解 ④ 融解 凝縮 昇華 ⑥ 気化 沸騰 凝固 
                                   
  a点,b点の温度をそれぞれ何とよぶか。
                                    
3  物質の三態
 
3-1                                 
  水の凝固である。
  昇華。
  蒸発。(気化)
  蒸発。(気化)
 
 
3-2 
(ア) 形 (イ) 体積 (ウ) 振動 (エ) 位置 (オ) 運動 (カ) 体積 (キ) 気体 (ク) 固体 (ケ) 蒸発(または気化) (コ) 凝縮 (サ) 凝固
 
 
 
3-3 
(ア) 引力 (イ) 表面 (ウ) 蒸発(または気化) (エ) 18 (オ) 100 (カ) 与える
 
3-4 
 氷が気化するから。(昇華するから)
 
3-5                                   気体,液体,固体。
  気体,液体,固体。
  固体,液体,気体。
 
3-6 
  A:(b),B:(c),C(a)  解説:Aは固体,Bは液体,Cは気体である。  ④
  a点:沸点,b点:凝固点

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