雪わたり
ひゅう ひゅう ひゅるるん
ひゅう ひゅう ひゅ
ひゅう ひゅう ひゅるるん
ひゅう ひゅう ひゅ
日本海から吹きよせる風が、木立にあたって笑っているような朝だった。
揺れているのはだあれ。
顔を上げたわたしに 白銀の世界がまたたいていた。
薄(ススキ)が一面におおっている枯野。その 枯野に雪が積もって、白い世界ができた。
その日、わたしは熱を出して起きれませんでした。
窓をあけた縁側から、銀色の輝く世界が一望できます。
せっかく母の実家に行っていながら、わたしだけが病気で、一人さみしい思いをしていました。
ひゅう ひゅう ひゅるるん
ひゅう ひゅう ひゅ
あいかわらず、日本海から吹いてくる風が笑うように、鳴っているのに、こちらには風は向かってきません。家の後のほうに植えた防風林が揺れている音でしょうか。
朝日がまばゆく銀色の世界を照らします。 その朝日の中に、動いているものがあります。人形のように、色とりどりの服を着た、小さな人は何でしょう。
それはまるで妖精です。
いえ、妖精なんかじゃありません。
ゆきわたり。
ゆきわたり、と言います。おさない日に、寒い夜、祖母から聞いたゆきわたりだったのです。
ひゅう ひゅう ひゅるるん
ひゅう ひゅう ひゅ
さっきから聞こえているあの音は、防風林の音ではなくて、ゆきわたりの踊る音だったのです。