秘密
美鈴さん,突然こんなことをしてしまったごめんなさいね。
あなたも,安男も麻紀子も三人とも立派でやさしくて,そしてパパとでこんなに立派な家庭を作れたことを感謝しているわ。
家族のひとりひとりの美しさが外面のみならず,いや外面以上に素晴らしい人たちだということを,私が一番よく知っているわ。みんなほんとうに良い子に育ってくれてありがとう。
そして,あなたが選んだ保さんも,安男の婚約者の礼子さんも,ほんとうに良い方でみんなが益々幸せになっているようで,こんなにうれしいことはないわ。
あなたも保さんと一緒に立派な家庭を築いてね。貴女ならできるわ。
でも,でも,みんなが幸せになっていくのに,私だけはついていけないの。
私にはパパと結婚する前に大切な人の子どもを堕したことがあるの。その大切な人は哲っちゃんと言ってママの同級生なの。哲っちゃんには二度もママは助けられたの。でも,その大切な哲ちゃんとの子どもの命をママは守ることができなかったの。あの子のことは,ママだけの秘密にして,パパには話してないわ。だって,ママだけの問題ですもの。ママだけが背負って生きなければならなかった十字架なの。