2125年
西暦2125年。人類はあまり進化しなかった。ただし,科学技術だけは悪魔的に進歩し,ややもすると人類が進化したかのように見えるところに,この社会の問題があった。
人類の能力は,百年前も二百年前も,千年前も,あまり変わっていない。なぜなら進化の速度は遅々たるものだから。むしろ,体力や,反射神経などについてみると,むしろ低下していると言ったほうがよかった。
あまりにも科学技術に頼り過ぎて,人体のあらゆる機能が低下した。しかし,それを補って余りあるだけのものを人類は獲得したので,あたかも神の如くに進化したように見える。
それでも科学技術という言葉は無限の可能性を秘めた甘い誘惑だった。その一つが宇宙だった。
だから宇宙への進出は一部の人間にとって当然のことであった。しかし、あくまでも一部であって、地球上のほとんどの人は地球の上で生活することに満足していた。いや、正確に言えば満足はしていなくても、それを宇宙に出ることによって代えようとは思っていなかった。
それでも、極めて少数ながらも宇宙へ出ようと考えている人は常にいた。
さらに驚くことには、長い宇宙空間の移動のためには、人工冬眠の技術も開発されていた。すなわち、未来に向かって人類を送り出すことであった。そして、設定された時に目覚め宇宙開発を行うという計画であった。
この計画は当初は無人で完全なロボットによるものであった。すなわちより人間に近いロボットによるものであった。それが、もう一つ逆の方向すなわち、人間を機械に近づける技術(サイボーク化)も進歩したので、両タイプの推進となったのだ。