2019年7月19日金曜日

ふるさとの史跡をたずねて 第140回   山伏山(因島田熊町)

ふるさとの史跡をたずねて(140)

山伏山(因島田熊町)

 生口橋の因島側にある山が山伏山である。風呂山、青影山、竜王山、山伏山と続いているようであるが、竜王山と山伏山との間には小さなトンネルがあって峠道が西浦峠から田熊町へと続いている。しかし、荒廃が進んでいるので、数年前通った時を最後に普通車では通らないことにしている。
 そのトンネルのところから登る。頂上近くには遠見岩と呼ばれている岩があるが、南側の地名(字)にやはり遠見岩というのがあるから、頂上の岩を遠見岩というのは、何かの間違いかもしれない。いずれにせよ、遠見岩というのは狼煙(のろし)を見る岩という意味だろう。
 重井町の竜王山(権現山)中腹に遠見山というのがある。やはり狼煙の見はり所だったと思われる。また、青影山の眺望はよく、多くの海域からも見ることができる。弓削港、伯方島トウビョウ鼻、重井町青木山、細島などからもよく見える。そのせいか水軍時代の青影山を見張所や司令所的な役割を持った場所として、その手段を狼煙をもとにして考えれば面白いかもしれない。
 しかし、狼煙は「ある」か「ない」かの二進法であり、仮に狼の糞を混ぜて色をつけたところで、多くの情報が送れるものではない。また天候に左右されやす。だから上記の想像がいかに現実離れしたものであり、実戦には向かいないということは、青影山に何度か登り、数時間海を眺めていればわかる。
 したがって、遠見岩とか遠見山とか言っても、水軍時代のものというよりも、後の平和な時代のものだと考えるのが妥当だろう。参覲交代や千石船の経過を、狼煙で知らせたということはあったかもしれない。
 さて、山伏山という名前は興味深い。山伏とは修験者のことであり、一般には修験道の修行者という意味である。だから、その修行の場であったということを示している。(写真・文 柏原林造)