2019年7月17日水曜日

夕凪亭閑話 2012年12月


2012年12月1日。土曜日。晴れ。
薄い雲を通して太陽が登って来る。これでは気温が上がらない。
午後、因島へ。松の剪定を始める。今日は少し。
「天地明察」はよくできた小説。テーマのユニークさもあるが、小説の基本をよく守って、読者を飽きさせない。長所短所を兼ね備えた主人公。才能が短所を補って余りある。個性的なヒロイン。その登場の間合い。主人公への試練とひとつずつ解決していく過程。そして、物語を支える制度、しくみなどの程よい説明。小説作りの王道を見事に実現した作品だ。
「天地明察」(角川書店)136頁。
合計136頁。(今月累計136頁、平均136頁/day)
 
 
2012年12月2日。日曜日。曇り。
夕凪亭は南東向きなので午前中に太陽の恩恵を受けるようになっている。反対側の小窓は夕陽が一時的に射し込むものの壁に当たり、冬場の恩恵は少ない。残念ながら今日のような日は、朝から夕凪亭に籠もっているのに、恨めしく白い雲を眺めるばかり。せっかくの日曜日を損した気持ち。
「天地明察」。それにしても凄い力量だな。はじめての時代小説とは思えないほどだ。
 
島田荘司「アルカトラズ幻想」(オール讀物2012.8)28頁。(3回了)
釜谷秀幸「宇宙の一生」(恒星社厚生閣)25 頁。(了)
「天地明察」(角川書店)74頁。(三章了)
合計127頁。(今月累計263頁、平均131頁/day)
 
 
2012年12月3日。月曜日。晴時々雨。
朝初氷。異常だ。あまりの早い冬の訪れに戸惑う。これ以上の天変地異は望まぬ。
「天地明察」は相変わらず面白い。ただ、作者の感想で主人公の感想でないようなのもあるようだ。そして何よりも、後世の時点から見た作者の感想で、主人公の時代にはそこまで広い視野を持つことはあり得まいと思われるところもある。そういうところもただ読んでいくだけなら、たいして気にするほどのことはないかもしれないが・・。
 
リサ・ランドール「ワープする宇宙」(日本放送出版協会)19頁。(22章)
「天地明察」(角川書店)89頁。(四章了)
「嘔吐」(中央公論社・世界の文学49)10頁。
合計118頁。(今月累計381頁、平均127頁/day)
 
2012年12月4日。火曜日。晴れ時々曇り。
今日は昨日より気温は高いのですが、冷たい風がひゅうひゅうと吹いて昨日以上に寒く感じました。戸外では。
「天地明察」を終わった。しかし、最終章が蛇足に近かった。せっかく盛り上がっていたのに、「天地明察」という言葉が勝負で決められず、裏工作で決められたのが残念でした。それと、関孝和と初めて会ったときの関の怒りの整理の仕方は、よくわかりませんでした。それにしても和算なども教えてもらってよかったと思っております。
冲方丁「天地明察」(角川書店)144頁。(了)
合計144頁。(今月累計525頁、平均131頁/day)
 
 
2012年12月5日。水曜日。晴れ時々曇り。
今日も寒い一日であった。こんな日が二月一杯まで続く。三ヶ月だ。日本の冬は長い。
数学エッセーを読む。なかなか有益ではないか。原書は100話であったが日本の本にするには長すぎるので50話にしたそうである。残りも読みたいものだ。そういえば「物理の散歩道」もすべて読んでいない。寺田寅彦全集も。いずれ読みたいものだと思う。読みたい本が多すぎる。選択と集中が必用なのだが、そんなことはできない。気の赴くままに読むのが、もっとも私の気質にあっていると思う。無理はしないことだ。
「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)50頁。(10話まで了)
「ペスト」(カミュ全集4) 22頁。
「けものたちは故郷をめざす」(学研・現代日本の文学47)24頁。
合計119頁。(今月累計644頁、平均128頁/day)
 
2012年12月6日。木曜日。晴れ時々曇り。
なんと、初雪だ。異常に早い冬の訪れに戸惑うばかり。あすは福山の最低気温がマイナス3℃という予報だ。
「5分でたのしむ数学50話」には魅惑的な未解決問題も紹介されている。多くの読者は、それを5分で楽しむのであろうが、中には、そんな問題に魅せられて一生をその解決に捧げる若者が現れるかもしれない。果たして、その人の人生が幸せか不幸せかは、誰にもわからない。ある意味では恐い書物かもしれない。
「博士の愛した数式」(新潮文庫)31頁。
「宇宙を織りなすもの 上」(草思社)61頁。(3章了)
「最新図説化学」(第一学習社)22頁。
合計114頁。(今月累計758頁、平均126頁/day)
 
 
2012年12月7日。金曜日。晴れ。夜雨。
1Q84」の10章はおもしろかった。というよりも、やっと主題が明らかになり興味が増したというべきだろう。春樹さんは私より少し年上で、学生運動の世代だ。私が大学に入ったときはすでに封鎖は解かれ、平穏で無気力な大学は回復していた。それでも,学内には汚れたれたヘルメットに軍手、タオル覆面の学生運動家たちが独特の書体で立て看板を書き、そのそばでこれまた傷ついたスピーカーに付いたハンドマイクで叫んで致し、時々デモもあり,機動隊も来ていた.だから、この10章の記述は,その頃の雰囲気を思いだすし、さらにオウム事件なそも彷彿させる。それにしても事実べったりではなく、うまく調合して、フィクションに仕立てているところに感心した。
リサ・ランドール「ワープする宇宙」(日本放送出版協会)41頁。(20、21章了)
1Q84」(BOOK1) 27頁。(10章了)
ブローデル「地中海Ⅱ」(藤原書店)22頁。
「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)46頁。(20話まで了)
合計136頁。(今月累計894頁、平均127頁/day)
 
 
2012年12月8日。土曜日。曇り時々晴。
今日も寒い日でした。12月というよりも1月だと思いましょう。
「博士の愛した数式」はなかなか魅力的な話で溢れている。数字のおもしろさは「フェルマーの最終定理」で数字が信仰の対象になるということを改めて納得したが、その類の話題をうまく取り込んでいる。220と284が友愛数。それぞれの約数の和が相手の数と一致する。(p.30) 4,28,496が完全数。各数字の約数の和がその数字と等しい。(p.71) という具合。
 
「ヒッグス発見の瞬間」(M.Riordan,G.Tonelli,S.L.Wu著、日経サイエンス2012.11)8頁。
「博士の愛した数式」(新潮文庫)60頁。(2,3節了)
「冲方丁公式読本」(洋泉社)50頁。
「他人の妻とベッドの下の夫」(筑摩・ドストエフスキー全集2)16頁。
「芽むしり 仔撃ち」(大江健三郎全作品1)16頁。
合計150頁。(今月累計1044頁、平均130頁/day)
 
2012年12月9日。日曜日。晴れ。
寒さには少し慣れたが、でも嫌な季節だ。朝、因島へ。山陽道は驚くほど車が少ない。高速料金はどうなるのだろうか。事故は完全にはなくならない。しかし、それをできるだけ少なくするのが人間の義務である。その為にはお金が必用だ。高速料金をできるだけ安くして、多少の事故は止む得ないと考えるか、少々高くても構わないから古い施設はどんどん新しくして事故の発生を極力避けるべきか。お金は安い方がいい、そして事故も起こらないほうがいい、というのは、温泉のようにお金が湧いて出ると思う人たちの発想だろう。
「宇宙を織りなすもの 上」(草思社)72頁。(4章了)
「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)49頁。(30話まで了)
「巨大ブラックホールと生命」(C,Scharf著、福江純訳、日経サイエンス2012.11)7頁。
合計128頁。(今月累計1172頁、平均130頁/day)
 
 
2012年12月10日。月曜日。晴れ。
2時間年休をとって眼科へ。調剤薬局で待っていると、次から次へと老人が・・・。自分も言うまでもなく、同類である。老いの自覚。そうだ、もう自分には残された時間は多くないのだ、と。ただ、ひたすら読むだけだ。本には良い本とか悪い本というのは無い。ただ、その時その時に読んて面白かった本が自分には良い本である。
昨日、手塚富雄訳「ドゥイノの悲歌」(岩波文庫)を買ってきた。「ツァラトゥストラ」「ファウスト」の訳文には敬服しているので、こちらも楽しみ。だが、本文は少なく解説が多い。
 
「博士の愛した数式」(新潮文庫)24頁。(4節了)
「冲方丁公式読本」(洋泉社)30頁。
「嘔吐」(中央公論社・世界の文学49)20頁。
「最新図説化学」(第一学習社)26頁。
合計100頁。(今月累計1272頁、平均127頁/day)
 
 
 
2012年12月11日。火曜日。晴れ。
島田荘司さんの「アルカトラズ幻想」(オール讀物連載)を終えた。冒頭の異様な事件からまったく予想もできない結末であった。殺人事件の犯人を捜すというような推理小説ではないが、犯人のその後を希有壮大に描いたミステリーの大作である。幻想ということであるから、誰も史実は思わないだろうが、いくらかの史実は含まれているのかもしれない。
世代も違い、面識はないが同じ高校の卒業生である湊かなえさんの「望郷、光の航路」は舞台となっている瀬戸内の小島が私が育った島をイメージでき親しみがもてた。いつもながらの直球でぐんぐんと押してくる内容であるが、後半の盛り上がりは見事だと思った。傑作である。
夕方、閉院前の内科医へ行き、高血圧の薬と、眼科の薬に対抗するための胃薬をもらってくる。ということで、引き続き朝7錠、昼3錠、夜4錠の薬を飲見続けながら、歳を越す予定である。
レーザープリンターのトナーが届いた。リサイクル品を前回使用して、少し調子がよくなかったので、今回は純正にした。
 
島田荘司「アルカトラズ幻想」(オール讀物2012.9)51頁。(4回了)
島田荘司「アルカトラズ幻想」(オール讀物2012.10)18頁。(5回了、了)
湊かなえ「望郷、光の航路」(オール讀物2012.10)18頁。(了)
「ペスト」(カミュ全集4) 18頁。
合計105頁。(今月累計1377頁、平均125頁/day)
 
 
2012年12月12日。水曜日。晴れ。
どうしょうもない選挙。民主党には失望だし、自民党の古き日本支配に戻るのには賛成しかねる。ならば、中小政党に託せるだけの理念があるかというと、やはり納得できない。どちらに転んでも日本はよくならない、と国民から愛想を尽かされたのではないか。無気力無関心ほど恐いものはないということは、歴史の教えるところだ。
ドストエフスキーの短編を終わる。はじめのほうはやや混乱気味だが、最後のところでうまくまとめている。本編もまた、会話だらけの小説である。ロシア人はこんなにもおしゃべりなのか。ロシア語の勉強はあまり進まない。それでも段階的に少しずつ分かるようにはなっている。乗りかかった舟だ。諦めないことだろう。
 
「他人の妻とベッドの下の夫」(筑摩・ドストエフスキー全集2)30頁。(了)
「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)67頁。(40話まで了)
「悪霊 下」(河出・ドストエフスキー全集10) 13頁。
合計110頁。(今月累計1487頁、平均123頁/day)
 
 
2012年12月13日。木曜日。晴れ。
少し寒さがやわらいだものの晴れた星空の下は寒い。午後10時半。オリオンが南に。左手上には仲良く双子座が。双子座との命名は実によい。夕凪亭からも見えるが、流星群を見ようと思ったら明かりを消さなければならない。暗くしたら、寝てしまう・・・。
冲方丁「もらい泣き」は感動的なエッセー。
島田荘司さんの「アルカタラズ幻想」(文藝春秋社)のカバーが素晴らしい。
 
エアハルト・ベーレンツ著、鈴木直訳「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)51頁。(了)
「冲方丁公式読本」(洋泉社)36頁。(了)
長部日出男「壮大な野心作『天地明察』」(オール讀物2012.9)6頁。
柴門ふみ「だから、大杉栄はモテるのだ」(オール讀物2012.10)3頁。
冲方丁「もらい泣き」(集英社)60頁。
合計156頁。(今月累計1643頁、平均126頁/day)
 
 
2012年12月14日。金曜日。晴れ。夜、雨。
夜になって雨が降り出した。少し暖かい気持ちになっていたのは一日半だけだった。今日は12月14日。いわずと知れた播州赤穂の義士祭の日である。世の中の多くの地方の祭りが土曜日日曜日に集中しているのにこの赤穂の義士祭だけは、新暦になったとはいえ14日から一日もはずれることはない。何曜日でもとにかく14日である。平日でも盛大な観光客だから、土日になった年はものすごいことになるのだろう。来年は土曜日だ。子どもが小さい頃、義士祭のときにも行ったし、義士祭でないときにも行った懐かしい町だ。さて、来年、「久し振りに行ってみようか」という気持ちになるだろうか。まずは、体力である。
次は「興奮する数学」である。例のミレニアム問題である。ヒルベルト23の問題の百年後に数学界のテールライトと選定された7つの問題をめぐる話だ。まずは出だしは、読みやすい。この後のことは予想がつかない・・・。
 
リサ・ランドール「ワープする宇宙」(日本放送出版協会)27頁。(19章了)
「冲方丁インタビュウ」(SFマガジン2012.11)5頁。
冲方丁「もらい泣き」(集英社)37頁。
キース・デブリン「興奮する数学」(岩波書店)30頁。
合計99頁。(今月累計1752頁、平均125頁/day)
 
 
2012年12月15日。土曜日。雨。
折り返しである。雨の。昼間少し止んだので久し振りに散歩。皇帝ダリアが早い冬の訪れに枯れて、無惨な姿をさらしている。また、ある家の庭では早々と刈り取られて、正月準備をしているみたいだ。故郷は熱帯地方なのかもしれない。
ニュートンの11月号は水の惑星特集だが、系外惑星のこと。すなわち、我が太陽系ではなく、他の恒星にまとわりついた惑星群のこと。だが、水が存在する条件は厳しく、太陽に近くてもいけないし、遠すぎてもいけない。また軌道が楕円軌道ではだめだという。当然といえば当然。寒暖の差が厳しくなるのだから。
水にこだわる必用がそこまであるのか? あるのだ。こだわり続けなければならない。もちろん広い広い宇宙のことだから、水以外の物質を基本としている生命体が、それも知的生命体がいてもおかしくはない。だが、仮に500℃を常温としている知的生命体がいたとしてみよう。彼らとコンタクトが取れても、一緒には住めない。だから、水のある惑星であることが大切なのだ。
冲方丁さんのエッセー「もらい泣き」は感動的なお話で、それもまた見事にまとめておられ感嘆!です。途中、連載10回目あたりで、ネタ切れになり周囲の人たちにお話を聞きまくったなどと、涙ぐましい努力があったことが書かれておりました。本ができてからのことは当然書かれておりませんが、それらの話題提供者の方々への、丁寧な挨拶状と著著の贈呈というこれまた大変な涙ぐましい努力があったことと思いました。
親の年賀状を刷る。トナーは届いたのに、プリンターの紙送りがよろしくない。人も物も家も年をとるものです。そして修理やメンテナンスにお金がかかるのは同じです。嘆息。嗚呼。
 
冲方丁「もらい泣き」(集英社)110頁。(了)
合計110頁。(今月累計1862頁、平均124頁/day)
 
 
2012年12月16日。日曜日。晴れ。
異常に暖かいと思うのは、これまでの寒さに躰が慣れていたせいだろう。
因島へ行って松の選定。一つ思いだした。今年出た葉に比べて去年の葉が長い。それを手で一本(二本対)ずつ取る。その他のことは覚えていたのにすっかり忘れていた。その他のこととはこうだ。松葉は途中で切れたら、その葉は枯れる。葉のなくなった枝は枯れる。だからハサミを使う時は慎重にやらないといけないということ。交差している枝を落とす。下に伸びる枝や葉を落とす。上下の間に光や風が通るように隙間を作る。枯れ枝、枯れ葉を落とす。枝の形や全体の形を考えながら、伸びすぎた枝を落とす。・・・要点はこんなところだろうが、実際にやってみるとかなり難しい。プロだったら一日で仕上げないといけないのだろうが、こちらは素人である。少しずつ、何回にもわたってする。だから広く浅くやって、繰り返すという具合だ。
昔、一本松という大きな松が、村はずれにあり、その周囲を「一本松」と呼んでいた。その地は、何度からの干拓の名残を地形に留めた不思議なところだった。小さな小川、大きな小川が交差し、かつ段差があったちょうど無限大の記号∞の中心のような位置にあった。その松の木の下に大きな石があった。その石には何個が蟻地獄のような擂り鉢状の窪みが何個か点在していた。ちょうど子どもの拳大で、砂を入れたり、蓬などの草を入れて小石で磨り潰したりと、けっこう子どもには楽しめた。しかし、子どもの私はそれが何のためにできたのか不思議に思っていたが、結局はわからなかった。大人になって、雨の日に庭の松の木を眺めているとき、玄関の敷石に落ちる水滴がいつも同じところだと気づいた。そして、その位置に小さな窪みができているではないか。まさに雨垂れ石を穿つという言葉通り、松の枝を伝った水滴は、くびれたところでいつも同じ所に水滴を落としていることがわかった。雨の日に一本松へ行くことはなかったので、そのことに気づかなかったのである。
松にとってはこのくびれが重要で、夜露の水滴の流れ道があすそうであるが、それはまだ私にはどのようになっているのかわからない。
その一本松は数年前に枯れて、二代目が植えられている。そして無限大の記号の左側の丸の中には土が入れられかつての土手の面影はもはやない。
 
リサ・ランドール「ワープする宇宙」(日本放送出版協会)13頁。(18章了)
冲方丁「黒い季節」(角川文庫)39頁。
「けものたちは故郷をめざす」(学研・現代日本の文学47)40頁。
福江純「天文マニア養成マニュアル」(恒星社厚生閣)13頁。
合計105頁。(今月累計1967頁、平均122頁/day)
 
 
 
2012年12月17日。月曜日。雨。
今日は雨など降らなくて、今日一日だけは昨日と同じように、あるいはそれよりも少し低い気温ながら、暖かい日が続くという予報であった。しかし、午前10時頃から小雨が降りはじめ、ほぼ一日中、降るともなく降っていた。しかし夜には星も出て上がったが、寒さだけは、いつものように襲ってきた。12月も、もう半ば過ぎだと、しみじみと思ったものだ。
弘法大師空海については、四国の霊場巡りをして以来、何冊か読んだ。でも、すぐに難しくなり、最近は空海の著作からも遠のいていた。ところが、最近、空海が高野山に道場を開いたわけが水銀にあるという、痺れるような話を知った。万能の天才空海のことだから水銀の製錬法は元よりそれを用いた金の製錬法までマスターするのに長い時間はかからなかったであろう。それにより、空海は金を手に入れるルートを掴んだのではなかろうか。そう考えれば、突然の入唐も、その後の活躍もよく理解できる。
 
京極夏彦「百鬼夜行陽 蛇帯」(オール讀物2011.1124頁。
リサ・ランドール「ワープする宇宙」(日本放送出版協会)20頁。(17章了)
「博士の愛した数式」(新潮文庫)34頁。(第5節)
「『生命の惑星』は必ずある!」(Newton 2012.11) 19 頁。
iPS細胞の今とこれから 第3回」(Newton 2012.11) 5 頁。
「嘔吐」(中央公論社・世界の文学49)18頁。
合計120頁。(今月累計2087頁、平均122頁/day)
 
 
2012年12月18日。火曜日。晴れ。
さて、水銀については島田荘司さんの「暗闇坂の人喰いの木」の中に水銀を静脈注射すると生きたままで剥製になるということが書かれたあった。水銀の単体、すなわち金属水銀は比重が13以上もある重たい液体だからこれを静脈注射してもどんどんと下のほうに沈んで体内を回ることはなかろうから、実質不可能に近いのではなかろうか。蒸気は毒性があり、奈良の大仏工事(最後の鍍金)のあと多くの死者が出たということであるから、これは水銀蒸気によるものと考えられる。もし、水銀化合物のあるものを静脈注射すれば、これは毒性が発揮されるとともに、防腐剤としても働き死体を長く保つのかも知れない。即身成仏に水銀化合物が使われたということであるから、そういうことかもしれない。空海の死後80年たっても遺体が腐敗していなかたというのも、おそらく水銀化合物による防腐効果であろう。ちょうど剥製に亜砒酸を使うようなものだろう。
 
葉室麟「汐の恋文」(オール讀物2012.3)14頁。
「ペスト」(カミュ全集4)28頁。
ブローデル「地中海Ⅱ」(藤原書店)24頁。
アトキンス「ガリレオの指」(早川書房)27頁。
冲方丁「冲方アニメ&ストーリー創作塾」(宝島社)35頁。
合計128頁。(今月累計2215頁、平均123頁/day)
 
 
2012年12月19日。水曜日。晴れ。
弘法大師関係文書を読んでいて確かに水銀が出てくる。水金と書いているのがそれだろう。ただ、今日のところはそれが入唐以前のものか、どうかはわからない。亡くなる前に水漿を飲まなくなる。それでは身体が腐敗するので○を飲みなさい、と弟子が言う。水漿というのは何だろうか。漿というのはどろりとした飲み物ということで、重湯のようなものだろうか。○の字は書けない。水漿というのが水銀化合物であるなら、それを飲むのを止めると死後腐ってしまう。そして別の薬である○を与えたというのなら話はわかるのだが。
 
キース・デブリン「興奮する数学」(岩波書店)45頁。
葉室麟「蜩ノ記」(祥伝社)30頁。
「芽むしり 仔撃ち」(大江健三郎全作品1)30頁。
アトキンス「ガリレオの指」(早川書房)10頁。
合計115頁。(今月累計2330頁、平均122頁/day)
 
2012年12月20日。木曜日。晴れ。
残り10日ほど。言うまでもなく、今年のこと。また一人、知人を見送った。こちらも年をとったのだから、年上の方々が旅立たれるのも無理のないことだ。いろいろとお世話になった方だった。ご冥福をお祈りする。
さて、私は他人のために尽くしているか。人のために役だっているか。否、否、否。自分では充実した生き方だとは思っているが、それは閉じられた孤独な生き方である。・・それでいいか。
 
冲方丁「黒い季節」(角川文庫)61頁。
葉室麟「蜩ノ記」(祥伝社)37頁。
冲方丁「冲方アニメ&ストーリー創作塾」(宝島社)21頁。
合計119頁。(今月累計2449頁、平均122頁/day)
 
 
2012年12月21日。金曜日。晴れ後雨。
朝起きて今日こそは部屋を片づけようと決心した。そしてだんだんと気温は上がり、それから時間がたつと気温は再び下がった。やはり誰も来ないし、今日はいいか・・・と、思ってしまう。人はこのように年をとっていくのか。
今年は全国的にホワイトクリスマスだそうです。A green Christmas makes a full churchyard.と昔から言いますから、ホワイトクリスマスのほうが喜ばれたのでしょう。瑞祥です。
 
湊かなえ「望郷、雲の糸」(オール讀物2012.1.)21頁。
葉室麟「蜩ノ記」(祥伝社)15頁。
「別冊太陽187 空海」(平凡社)30頁。
冲方丁「黒い季節」(角川文庫)20頁。
「嘔吐」(中央公論社・世界の文学49)19頁。
合計105頁。(今月累計2554頁、平均121頁/day)
 
 
2012年12月22日。土曜日。曇り。
雨は降らないものの寒い一日。因島へ。松の剪定をしようと思ったら昨日の雨で濡れていたので、諦める。時折弱い日が照るものの、曇りがち。
葉室麟「蜩ノ記」(祥伝社)の後半を読んで終わる。完成度の高い傑作。物語も鮮明で楽しく読める。感動的な場面に溢れ、爽やかな読後感。良い本であった。
 
葉室麟「蜩ノ記」(祥伝社)222頁。(了)
合計222頁。(今月累計2776頁、平均126頁/day)
 
 
2012年12月23日。日曜日。曇り。
7時半に起きる。いつもより1時間遅い。珍しいことだ。朝買い物(食品)、午後買い物(雑貨)。午後昼寝。
散歩は少し歩いたところで、風が強いので引き返す。夜、激しい風。気温が下がる。明日はマイナス3℃の予報。この冬一番の寒さか。星は出ているが少し曇った。
安部公房「けものたちは故郷をめざす」(学研・現代日本の文学47)23頁。 (了)
 
冲方丁「冲方アニメ&ストーリー創作塾」(宝島社)140頁。(了)
合計163頁。(今月累計2939頁、平均127頁/day)
 
 
2012年12月24日。月曜日。晴れ。
珍しく朝から晴れる。それ故、放射冷却でこの冬一番の寒さを経験したのではあるが。
「空海は古代ユダヤの錬金術師だった」という表題はいかにもいかがわしい。ノストラダムス本と同じようにトンデモ本の一種だと思う向きも多いだろう。私もそう思う。だが、こういおう本のすべてが嘘という訳ではない。ところどころ、さもありなんと思うところがないわけではない。だが、根本的な結論ユダヤ人というのは根拠がない。錬金術師というのは、水銀の取り扱いができたということで首肯できる。
月海黄樹「空海は古代ユダヤの錬金術師だった」(徳間書店)232頁。
合計232頁。(今月累計3171頁、平均132頁/day)
 
2012年12月25日。火曜日。晴れ。
遅くなって晴れたものの気温は低い。明け方は寒く、12月にしては最高の寒波であった。
高校時代からの宿題であった「嘔吐」をやっと読んだ。二回目ではない。「はじめて」である。あまりおもしろいものではなかった。フランス語版も買ってあるが、あまり乗り気ではないが、少しは見てもよいかと思う。
 
「嘔吐」(中央公論社・世界の文学49)22頁。(了)
安部公房「魔法のチョーク」(学研・現代日本の文学47)10頁。(了)
冲方丁「黒い季節」(角川文庫)190頁。(了)
合計222頁。(今月累計3393頁、平均135頁/day)
 
 
2012年12月26日。水曜日。晴れ。
いよいよ2012年も残すところ一週間を切った。まことに月日のたつのは早いものだと思う。年をとるばかりではあるが、本は順調に読んでいるので、よしとしよう。ロシア語を少しやる。辞書のひきかたもまずまず。やはり、やればやるだけ進歩するものだ。この調子でスペイン語にも時間をさきたいものだと思う。
葉室麟「ぎんぎんじょ」は「葉隠」の鍋島藩の藩素ともいう鍋島直茂の妻・陽泰院の話である。日本の名著「葉隠」の巻末関係年表のはじめのほうの時代である。これまた、きりっと締まった名品である。
 
鯨統一郎著「空海 七つの奇蹟」(祥伝社)180頁。(了)
葉室麟「ぎんぎんじょ」(オール讀物2011.12)16頁。
合計196頁。(今月累計3589頁、平均138頁/day)
 
2012年12月27日。木曜日。晴れ。
本日の朝、自動車の示す車外気温は0℃。そんなに寒いとは思わなかったのに・・・。
寒い年は氷河期を偲べばいい。人類とマンモスを描いた絵は図鑑などでよく見るから、氷河期にも人類は果敢にマンモスに立ち向かったのだろうか。いや、単なる誤解か?
 
「悪霊 下」(河出・ドストエフスキー全集10)29頁。
瀬戸内寂聴・阿刀田高対談「九十歳の言いたい放題」(オール讀物2011.12)10頁。
iPS細胞、ミトコンドリア、スパコン京、天文和書等(ニュートン2012.12) 70頁。
「博士の愛した数式」(新潮文庫)23頁。(第6節)
合計132頁。(今月累計3721頁、平均137頁/day)
 
2012年12月28日。金曜日。雨。
仕事納め。夜、息子が帰ってくる。さらにその後、「望郷」の島に帰省する高校時代の友人が立ち寄ってくれる。
湊かなえ「望郷、海の星」は、瀬戸内海の小さな島という設定で閉鎖的な人間関係というカモフラージュによって、現代では希有な情愛に満ちた人間関係を描くことに成功している。
東野圭吾「探偵ガリレオ」(文藝春秋)27頁。(第1章)
龍村仁監修「地球交響曲第四番」(サンマーク出版)30頁。
湊かなえ「望郷、海の星」(オール讀物2011.4)21頁。
「三国志演義1」(ちくま文庫)41 頁。
合計119頁。(今月累計3840頁、平均137頁/day)
 
 
 
2012年12月29日。土曜日。晴れ。
私も「望郷」の島に帰省。墓参、散髪。
島田荘司著「夏、19歳の肖像」(文藝春秋)218頁。(了)
合計218頁。(今月累計4058頁、平均139頁/day)
 
2012年12月30日。日曜日。雨後曇り。
朝からかなりの雨。
昼過ぎ、雨が止んだので少し散歩。雨上がりの街は、早春のようにさわやか。まだ春には少し早いが。夜、同窓会。「探偵ガリレオ」のナトリウムには打ちのめされた。でも、実際には加害者のほうがやられるだろう。
 
キース・デブリン「興奮する数学」(岩波書店)26頁。
東野圭吾著「探偵ガリレオ」(文藝春秋)218頁。(了)
合計244頁。(今月累計4402頁、平均146頁/day)
 
2012年12月31日。月曜日。晴れ。
寒い大晦日。ほんの一時だが雪も舞う。午後散歩。
いろいろあったが楽しい一年であった。
御愛読を感謝。
 
永積昭著「アジアの多島海」(講談社世界の歴史13)28頁。
安部公房「デンドロカカリア」(学研・現代日本の文学47)13頁。 (了)
合計41頁。(今月累計4443頁、平均143頁/day)
 
 
 
 
今年57冊目。
釜谷秀幸著「宇宙の一生」(恒星社厚生閣)。
今年58冊目。
冲方丁著「天地明察」(角川書店)。
今年59冊目。
エアハルト・ベーレンツ著、鈴木直訳「5分でたのしむ数学50話」(岩波書店)。
今年60冊目。
「冲方丁公式読本」(洋泉社)。
今年61冊目。
島田荘司著「アルカタラズ幻想」(文藝春秋社)。
今年62冊目。
冲方丁著「もらい泣き」(集英社)。
今年63冊目。
葉室麟著「蜩ノ記」(祥伝社)。
今年64冊目。
冲方丁著「冲方アニメ&ストーリー創作塾」(宝島社)。
今年65冊目。
月海黄樹著「空海は古代ユダヤの錬金術師だった」(徳間書店)。
今年66冊目。
冲方丁著「黒い季節」(角川文庫)。
今年67冊目。
鯨統一郎著「空海 七つの奇蹟」(祥伝社)。
今年68冊目。
島田荘司著「夏、19歳の肖像」(文藝春秋)。
今年69冊目。

東野圭吾著「探偵ガリレオ」(文藝春秋)。