2026年7月12日日曜日

香西先生に教えてもらったことなど

    香西先生に教えてもらったことなど

         柏原林造 (朝日高校旧職員 現広島大学附属福山高等学校教諭)

 昭和52年の4月から1年間、 岡山県立岡山朝日高校で常勤講師として勤めさせてい

ただきました。 ですから香西先生とご一緒に勤務させていただいたのは、1年間だけ

ですが、教員生活を始めた最初の年でもあり、実に多くのことを香西先生から教わり

ました。 また、 その後も職場はかわっても折りにふれお便りをいただいたりお話を伺

ったりして今に至るまでいろいろと教えていただいております。

 山岡望先生のことについてはいろいろなお話しを繰り返ししていただきました。 山

岡先生というのは旧制の第六高等学校で化学を教えられていた方で、山岡先生の影響

で化学を専攻するようになった学生が多く、化学教育の原点のような方だと思います。

教員になる前に山岡先生のことは有名な方だというぐらいにしか知りませんでしたか

ら、香西先生が山岡先生の教え子の一人であったと聞いたときには驚いたものです。

また、朝日高校のあるところが六高のあった場所だということでいろいろな話がより

身近に感じられたものです。 私個人は山岡先生から直接教えは受けたことはありませ

んが、山岡先生の著作を読んでも山岡先生の姿が生き生きと浮かんでくるのは香西先

生からいろいろと山岡先生のことを聞いたからです。 山岡先生は第1回の化学教育賞

をお受けになられた方で、巧みな演示実験や浩瀚な化学史の著作のことは有名ですが、

六高の化学教室のことについてはあまり知られておりません。 その六高の化学教室の

ことも山岡先生の本に詳しく書かれてありますが、これらのことも香西先生からよく

話していただきました。 それから、 Journal of Chemical Educationという雑誌の紹

介と購入の仕方を教えていただいたのもこの頃のことです。 それ以来この雑誌を購読

しております。 その他、 実験例や薬品の薄め方まで多くのことを教えていただきまし

た。

 聖書とギリシア語、 それにドイツ語の学習は香西先生がずっと続けておられたこと

です。ご一緒に勤務させていただいた頃も折りにふれお話を伺いましたが、 その後も

ずっと続けておられるとお聞きして感動したものです。 そしてさらに感動的なことは、

それらの知識が単なる知識ではなく、 香西先生の思想あるいは人格という形で、 先生

の人生とともにあるということではないかと思います。 別の言い方をすれば、 思索と

読書がまさに生活の中に深く根を張ったような生き方をされているとでもいえるので

はないでしょうか。ですから、 香西先生が化学の教員を定年退職されたことで一番残

念なことは、ここで述べたような先生が生徒の前からいなくなるということです。 化

学の知識の豊富な教員はたくさんおられます。 しかし、 香西先生のように読書や学習

の成果を生き方や生活の中にまで反映させているような方は少ないと思います。

 このように私は、 香西先生からは、いわば知識の面と生き方の面の両面で、 実にた

くさんのことを教えていただいたように思います。 知識の面一これはいわば技術的な

面といってもいいかと思いますがーでは、教えられたことを実行することで身につけ

ることができましたが、 生き方の面では、 未だに身についていないように反省してお

ります。 すなわち、文学や哲学を読んでも、それが知識のレベルにとどまり生き方に

まで反映しないのです。 香西先生のますますのご健康を念じますとともに、 私自身香

西先生から教わったことを生かして、 今後の生活において努力したいと思います。

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岡山県立岡山朝日高等学校香西民雄先生御勇退記念冊子より。