2026年7月11日土曜日

デモクリトスの原子説について ールクレティウスの著作からー


19世紀初頭に提出されたドルトンの原子説は古代ギリシアの哲学者デモクリトスの原子説を参考にしている。デモクリトスの原子説は、ローマの詩人ルクレティウスの著作からうかがうことができる。デモクリトスからルクレティウスへの影響は例えば、は次のように述べられている。

ヨーロッパのアトミズムの歴史的原型である古代ギリシアのアトミズムは、前5世紀後半、パルメニデス以後の自然探求・宇宙論の再構築動向のなかで、レウキッポスおよびデモクリトスによって提唱された。エピクロスはこれを自身の自然学の基礎理論として継承し、ルクレティウスはエピクロス哲学を称揚してその原子論体系を壮大な叙事詩に謳いあげた。山田道夫、「原子論」、廣松渉他編、『岩波哲学・思想事典』、岩波書店、1998、p.465

本稿ではルクレティウスの『事物の本性について-宇宙論』の中から原子について語られているところの一部を抜き出して、デモクリトスの原子説を理解することにする。

テキストは、

ルクレティウス著、藤沢令夫・岩田義一訳、『事物の本性について-宇宙論』(筑摩世界古典文学全集) :(筑摩と略記。)

を用い、併せて、

ルクレーティウス著、樋口勝彦訳、『物の本質について』(岩波文庫) :(岩波と略記。)

を参照した。また、原文と、英訳は

Perseus Digital Library http://www.perseus.tufts.edu/hopper/

を用いた。

また、原文は

THE CLASSICS PAGE http://www.thelatinlibrary.com/classics.html#texts  

も参照した。

なお、原文は詩であり、行の途中で切れたり、あるいは途中で改行されることもあるが、本稿では忠実に再現していない。特に、岩波版の引用は本文の改行とは大きく異なる。また数字はその行数を示すが、煩雑になるので筑摩版の行数を記した。続く文は必ずしも行の先頭にあるものばかりではない。

 

第一巻 

(筑摩p.300)(岩波p.32)

483物体ののうちで、そのあるものは物の元素(アトム)であり、

484他のものは元素の結合によって構成されたものである。

さて、物質とは一部は原子であり、

また一部は原子の結合によって形成されているものである。

Corpora sunt porro partim primordia rerum,
partim concilio quae constant principiorum.

Bodies, again,
Are partly primal germs of things,and partly
Unions deriving from the primal germs.

 

(筑摩p.300(岩波p.32)

485ところで物の元素たるもは、どんな力もこれを消滅させることが

できない。

この原子なるものは、如何なる力でも、消滅せしめることのできないものである。

sed quae sunt rerum primordia, nulla potest vis

stinguere; 

No power can quench; for in the end they conquer
By their own solidness; 

 

(筑摩p.301)(岩波p.33)

510それゆえ基本物体(アトム)は緊密にして空虚を含んでいない。

従って、原子とは強固にして、空虚を持たないものである。

sunt igitur solida ac sine inani corpora prima.

(筑摩p.301)(岩波p.33)

511さらにまた、生みだされたものの中には空虚が存在するから

512そのまわりに充実した元素が存在しなければならない。

さらに、被造物の体内には、空虚が含有されているが故に、

その空虚の周囲を原子が、とりまいているに違いない。

Praeterea quoniam genitis in rebus inanest,

materiem circum solidam constare necessest;

 

(筑摩p.301)(岩波p.34)

518それゆえ素材(アトム)は、隙のない緊密さをもっているため、

519他の物体が分解するときにも、不滅でありうるのである。

原子は、従って、強固な構造に成っていて、

他の〔原子の集合物なる〕ものは分解するとも、これの方は恒久的なものであり得る。

materies igitur, solido quae corpore constat,
esse aeterna potest, cum cetera dissoluantur.

(筑摩p.302)(岩波p.35)

574それゆえ、緊密に詰った単一さゆえに強力な物体(アトム)が存在し、

575それらがより密に結合することによってすべてのものは

576引きしまり、強い力を発揮することができるのである。

であるから、原子は強固なる単一性の故に力強く、

その結合が緊密であればあるほど、

物はいよいよ一層緊密に凝結され、固い力を発揮し得るのである。

sunt igitur solida pollentia simplicitate,
quorum condenso magis omnia conciliatu               
artari possunt validasque ostendere viris.