1.はじめに
エディソンは生涯に多数の特許を取得した発明王であったが、科学上の業績としてはわずかに、真空管においてフィラメントに電流を流すと電子が飛び出すというエディソン効果1)が記録されるだけである。それはエジソンの方法が科学的で実験を繰り返すものであったにせよ、実際の生活に役立つものを作ることにあったのだから、当然といえば当然のことであったかもしれない。
しかし、考えてみれば、エジソンのようなまさに科学的な仕事をした人が中学校・高等学校の理科教育で語られることがないというのは、おかしなことである。その理由は、技術と科学を別の分野と考え、技術軽視、科学偏重の我が国の理科教育にあるのではないかと思われる。だから、当然のように、科学技術の成果にどっぷりと浸かっている生活を送りながらも、不思議なことに理科離れという現象が起こる。それはまた生存の最も基本である食の生産である農業を軽視してバラ色の未来があると思うのと同根の誤った認識に他ならない。
科学技術を学び、その中に科学教育や技術教育があることを知らなければならない。そして学校で習う科学史は科学技術史であるべきであろう。
そのような風潮の中で、エジソンの業績の中で、高校化学の教材になるものがあるので、本稿ではそれについて述べる。
2.エディソンの電球
白熱電球の発明はエディソンの業績のなかでも有名なものである。小学生の頃読んだ伝記では、試行錯誤の末、京都の竹を燃焼して得た竹炭で成功したと書いてあったが、手元の伝記を開いてみても、そのようなことは書いていない。しかし、繊維を燃焼して得た炭素を高真空で用いて成功したようである。
二週間以内に、炭素フィラメント電球の特許を申請したが、そこで「木綿糸でも、うまく炭化し、封じたガラス球に入れ、100万分の1気圧まで排気すれば、100ないし500オームの抵抗をもち、非常な高温で絶対に安定である」と主張した2)。
このことについて、大谷杉郎は次のように記している。
もっとも古い炭素繊維の特許は、白熱電燈のフィラメント用として、1880年に提出されたT.Edisonらのものである。この繊維は20世紀にはいってまもなくタングステン線に代わり、炭素繊維の研究は中断された。新しい炭素繊維は、航空宇宙用の複合材料として、1950年代後半から研究が開始され、1959年にUCC社かレーヨンを原料とする最初の製品Thornel®が市販された3)。
このことから、釣り竿から航空機にまで多くの分野で使われている炭素繊維を最初に作った人としてエディソンのことが語られてよいことがわかる。
参考文献
1) 久保亮五他編、『理化学辞典 第4版』、岩波書店、1987、p.136
2) R.W.クラーク著、小林三二訳、『エジソンの生涯』、東京図書、1980、p.115
3) 高分子学会編、『高分子新素材便覧』、丸善、1989、p.455